上位ページへ戻る。

(スペイン民法)                   元司法書士 古閑次郎

(平成27年3月見直し修正)

第1編 第8章:失踪

(第1節:失踪宣告(declaración de ausencia)とその効果)

181

全ての場合、ある者がその住所または最後の居所地から、便りがなく失踪したときは、裁判官は、利害関係人または検察庁の申立により、裁判(行為)において、または、重大な損害なしには遅延が許されない法律行為において、失踪者を保護・代理する財産管理人(defensor)を指名する。失踪者に第183条に従って法律上または任意な代理(人)が付されている場合は除かれる。

法定別居していない成年である(現の)配偶者は失踪者の代理人かつ自動的に財産管理人となる。その者がいないと、成年で4親等以内の最も親等が近い者が該当する。親族がいない場合、それらが出頭しない場合、または、明らかに緊急な場合は、裁判官は検察庁の意見を聞いて資力があり経歴が良い者を指名する。

また、裁判官は、その裁量で財産の保存に必要な措置を採ることができる。

182

次の者は、優先順序なしに、失踪宣告を請求および申請する義務を有する:

① 法定別居していない失踪者の配偶者。

② 4親等以内の血族。

③ 検察庁が職権で、または届出を受けて。

更に、失踪者の財物上にその者の生存中にまたは死亡に依り行使し得る或る権利を有するものと合理的に推定される何人もこの宣言を求めることができる。

183

その住所または最後の居所から姿を消した者は(次の場合は)失踪状態にあるとみなされる:

① 財物全部の管理権能を委託した代理人を置かなかった場合は、最後の便りから1年経過した場合、または、便りがないときでその姿を消してから1年経過した場合。

② 財物全部の管理権能を委託した代理人を置いたときは、3年経過した場合。

受託者の死亡または正当な辞任もしくは受任の期限満了は、これらが生じたとき失踪者の居場所が分からなく、かつ、最後の便りから1年経過したとき、また、便りがない場合は失踪から1年経過したときは、失踪を確定する。失踪宣告が身分登録簿に登録されると、失踪者がなした包括的または特定の委任はすべて権利が消滅する。

184

裁判官が認めた重大な事由がないと、失踪宣告された者の代理、その者の捜索、その者の財物の保全と管理およびその者の債務の履行は、(次の者に)属する:

① 法定別居または事実上の別居をしていない成年者である(現の)配偶者。

② 成年者である子。複数居るときは、失踪者と同居していた年長者が優先する。

③ 最も親等が近く若い両系の尊属。

④ 失踪者と同居していた成年者である兄弟。年長者が優先される。

 これらの者がいない場合は、裁判官が検察庁の意見を聞いてその裁量で指名するところの資力があり経歴が良い者に完全に属する。

185

失踪宣告された者の代理人は次の義務を負う:

① 本人の動産の財産目録を作成し、不動産の明細を作る。

② 裁判官が裁量的に決める保証を提供する。前条の①、②と③に含まれる者は除かれる。

③ 失踪者の財産を保全・保護し、その財物から可能な通常の収益を得る。

④ 失踪者の財物の占有と管理について民事執行法で規定されている規則を遵守する。

後見行使および後見人の無資格、解任と免除の事由の規定は、失踪者の選定代理人に、その特別な代理に適合する範囲で、適用される。

186

184条の①、②と③に該当する失踪宣告された者の法定代理人(representante legítimo)は、果実、利子と利益、失踪者の子の人数、その者たちへの扶養義務、代理に必要とされる注意と活動、財産に掛かる担保および自身の状況の全体を考慮して、失踪者の財産の一時的占有を享受し、裁判官が示す範囲で流動収入(productos líquidos)を自己のものにする。

同条の④に該当する法定代理人は、失踪者の財産の一時的占有を享受し、裁判官が示す範囲で果実、利子と利益を自己のものにするが、失踪者または場合によってはその相続人もしくは承継人のために流動収入の1/3を留保することにより、流動収入の2/3を超えるものは自己のものとはできない。

失踪者の財物の一時的占有者は、それを売却し、担保・抵当に入れ、または質に入れることは、裁判官がこれらの行為を承認して必要量を決めて、明らかに必要または有用と宣言しないと、できない。

187

一時的占有の享受または選定代理権行使の享受の間に、ある者が当該占有に優先する権利を証明すると、現実の占有者は排除される。しかし、その(優先権利)者は、訴え提起の日から収益について権利を取得する。

失踪者が出現すると、その財産は、介入者が悪意でない場合、(介入者により)取得された収益を除き、回復される。介入者の悪意の場合は、取得された果実および回復の日から収受すべきものが、裁判所の宣言に従って、回復される。

188

一時占有または選定代理権行使の間に失踪宣告された者の死亡が証されると、死亡時にその遺言承継人または法定相続人のために相続が開始し、一時占有者に死亡者の財産をそれらの者へ引渡す義務が課されるが、(一時占有者が)受取った収益は先に示された量で自分の物として保留される。

売買または他の権原で失踪者の財物を取得したと証拠書類(documento fehaciente)で証明する第三者が出現すると、当該財物について代理権は停止し、それらは正当な権利者の処分に服する。

189

失踪者の配偶者は財産分離の権利を取得する。

190

失踪宣告された者の名で権利を主張するためには、その権利の取得にその存在が必要とされる時期に(失踪者が)存在していたと証明する必要がある。

191

前条の規定は別として、失踪者が(相続人として)呼ばれた相続が開始した場合は、この者の持分は、それを主張する権利を持つ者がいないときは、共同相続人の持分を増加させる。それらの者は、場合によっては、死亡宣告まで保管される当該財物の目録を、検察庁が介入して、作成しなければならない。

192

前条の規定は、失踪者、その代理人または承継者が有する相続回復請求権または他の権利を害しない。これらの権利は消滅時効に定められた時期の経過により消滅する。共同相続人の持分を増加させる不動産の登記簿中になされる(相続)登記に、(当該不動産は)本条と前条の規定に服している旨が表示される。

2死亡宣告(declaración de fallecimiento)

193

死亡宣告は(次の場合)手続される:

① 失踪者からの最後の便りから、便りがない場合はその行方不明から、10年経過した。

② 最後の便りから、便りがない場合はその行方不明から、5年経過したときで、失踪者がその期間経過時に75歳になっているとき。

上記の期間は、最後の便りがあったときの暦年の終了(expiraciòn)から、それがない場合は、行方不明となったその暦年の終了から、計算する。

③ ある者が遭遇した生命に対する暴力による死亡の危急危険の日から数えて、暴力の後にその者の便りがない場合、1年経過したとき。災害(siniestro)の場合はこの期間は3ヶ月となる。

政治的または社会的秩序の破壊活動においてある者が失踪し、上記の期間内にその者の便りがなかった場合は、破壊活動が止んでから6ヶ月経過すると、暴力と推定される。

194

また、死亡宣告は(次の者について)手続される:

① 武装派遣部隊(contingente armado)に属していて、または、志願補助公務員(funcionarios auxiliaries voluntaries)の資格であるいは通信の職務で武装派遣部隊に従事していて、戦闘に加わりそこで行方不明になった者で、平和条約締結の日から、また、締結されなかった場合は戦争終結の公式宣言から2年経過したとき。

② 遭難した船舶に乗船していた者、または、海に沈んで行方不明になった者で、遭難または行方不明の確認からその者の便り無しに3ヵ月経過したとき。

  船舶がその目的地に到着しない場合、または、到着港が定かでなく、最後の通信受領の日から、または、通信がないとその船舶が最初に航海に出た日から、6ヶ月経過しても戻らない場合は、遭難したと推定される。

③ 遭難した航空機に搭乗していた者で、その者からの通知がなくて遭難の確認後3ヶ月経過した場合、または、人の遺体が発見され、同一性の確認ができなくて遭難の確認後3ヶ月経過した場合。

  海上、砂漠地帯または無人地帯上を飛んでいた場合は、搭乗者または航空機の最後の通信から、または、最後の通信がないときは旅程開始の日から、6ヶ月経過すると、遭難と推定される。旅程が乗継の場合は、当該期間は最後の通信を受けた離陸地から計算する。

195

死亡宣告により法的失踪状況は止むが、当該宣告がなされない間は、失踪者は、反対の調査結果(investigaciones)がある場合を除いて、死亡したとされるべき時まで生存していたと推定される。

全ての死亡宣告は、前各条の規定に従って、反証がある場合を除いて、その日以降に死亡が発生したと考えられる当該その日を(死亡日と)表示する。

196

失踪者の死亡宣告が確定すると、その者の財物について相続が開始し、場合に応じて有遺言または無遺言の裁判手続により、または、裁判外で、財産分配に取りかかる。

相続人は死亡宣告から5年までは無償で(財物を)処分することはできない。

この期間経過までは、遺言者の魂の救済での情深い遺贈または福祉施設への遺贈を除いて遺贈物を引渡すことはできず、受遺者は遺贈物を請求する権利を有しない。

相続人が一人であって分配の必要がなくとも、公証人による動産の財産目録作成と不動産の明細作成は相続人の義務である。

197

死亡宣告の後、失踪者が出現し、または、その存在が証されると、失踪者はその財物を現状のまま回復し、売却された物の代金またはその代金で取得した物について権利を得る。しかし、相続財物で得られた利息、果実、収入については相続人に(回復)主張できるのは、出現の日または死亡していないことの確認の日からの分である。

(第3節:失踪者中央登録所)

198

失踪者中央公共登録所(Registro Central y Público de Ausentes)には(次の事項が)証される:

① 法定失踪の裁判上の宣告。

② 死亡の裁判上の宣告。

③ 裁判上承認された法定代理権と選定代理権、および、その消滅。

④ 動産目録の作成場所、日付、作成者および認証公証人の詳細な記載および本章で調製される不動産の明細。

⑤ 譲渡決定(auto de concesión)の詳細な記載および裁判所の許可を得て失踪者の法定代理人または選定代理人がなす移転と供担保の公正証書の作成場所、日付、約定者と認証公証人の詳細な記載。

⑥ 財物の明細または目録の公正証書の作成場所、日付、約定者および認証公証人の詳細な記載、同様に、死亡宣告の結果作成された分割・分配の公正証書またはその各々の場合での区分帳簿(cuadernos particionales)のプロトコル化の記録書の作成場所、日付、約定者および認証公証人の詳細な記載。