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(スペイン民法)                 元司法書士 古閑次郎

(平成27年3月見直し修正)

2編 第5章:占有権

(第1節:占有権とその種類)

430

ある物の所持またはある者によるある権利の享有は自然占有(posesión natural) である。物または権利を自己のものとして持つ意思と結合したその同じ所持または享有は(有意)占有(posesión civil)である。

431

占有は、物または権利に、それを持って享有するその同じ者によりまたはその者の名で他の者により行使される。

432

財物および権利の占有は、次の2つの概念の一つでなされる。すなはち、所有者として、または、所有権は他の者にあって、保管または享有するための(物もしくは権利の)所持者として。

433

その取得権原(título de adquirir)または取得方式において取得を無効にする瑕疵の存在を知らない者は善意の占有者とみなす。

 反対の状況にある者は悪意の占有者とみなす。

434

善意は常に推定され、占有者の悪意を主張する(afirmar)者に証明責任がある。

435

善意で取得された占有は、占有者がその物を不当に占有していると知らないではないことを証する行為が存在する場合にそのときから、その性質を失う。

436

反対の証明がない間は、占有は、取得時と同じ状況(concepto)で享受され続けられていると推定される。

437

領得(apropiación)され得る物および権利のみが占有の対象となり得る。

(第2節:占有の取得)

438

占有は、物もしくは占有される権利の実質的占拠により、それらを我々の意思の作用に服しめる事実行為により、または、自身の行為及びその権利を取得するために規定された法的手続きにより、取得される。

439

占有は、それを享受する者と同一の者により、その法定代理人により、その受任者により、また、委任のない第三者により、取得される。しかし、最後の場合は、その者の名で占有行為が実行された当該その者がそのことを追認するまでは、占有は取得されていないものとみなされる。

440

相続財物の占有は、相続が承認される場合、相続人に被相続人の死亡の時から中断なく移転されたものとみなされる。

有効に相続放棄する者は、いかなるときも占有していなかったものとみなされる。

441

いかなる場合も占有を、それに抗する占有者がある間は、暴力的に取得することはできない。ある物の所持を他人から剥奪するための訴権または権利を有していると信じる者は、所持者が引渡しを拒むときは、管轄ある当局の援助を要請しなければならない。

442

相続名義で承継する者は、その被相続人の瑕疵ある占有の効果を、被相続人に係わっていた瑕疵を知っていたと証明されないときは、蒙らない。しかし、善意占有の効果は被相続人の死亡日から承継者を益する。

443

未成年者および無能力者は物の占有を取得できる。しかし、その者の有利に占有から生じる権利を使用するためには適法な代理人の援助が必要である。

444

単純に受忍される行為、および、密かにそして物の所有者の知見なしにまたは暴力的に実行された行為は、占有に影響しない。

445

事実としての占有は、不分割の場合以外は、異なる2人格に認められ得ない。占有の事実について争いが生じた場合は、実際の占有者が優先する。2人の占有者がいるときは、古い占有者が優先し、占有の日が同一のときは、権原を提出する者が優先し、それらの条件が同じ場合は、その物は、対応する手続によりその占有または所有権に関して決定される間、裁判上の供託または保管される。

(第3節:占有の効果)

446

全ての占有者は、その占有を尊重される権利を有する。それに不安を有する場合は、手続法が規定する手段によりその占有は保護または回復されなければならない。

447

所有の意思で取得・享受される占有のみがその所有権を取得するための権原として作用する。

448

所有の意思を持つ占有者は、その者の有利に、正権原を持って占有しているとの法律上の推定を享受し、それを表示する義務を課されない。

449

不動産の占有は、その中にある動産および物体の占有を、除外されるべきであると証明されない間は、推定させる。

450

共同で占有されているある物の共有者の各々は、不分割が続いていた間は、分割したら分配される部分を排他的に占有していたとみなされる。共同で占有されている物の全部または一部の占有の中断は、同じように全員を害する。

451

善意の占有者は、占有を適法に中断されない間は、収取された果実を自分のものとする。

自然果実および生産果実(frutos industrials)は、取上げられまたは分離されるときから収取されたとみなされる。

法定果実は、日ごとに生じたとみなされ、善意の占有者にその按分で帰属する。

452

善意が止んだときに、ある自然果実または生産果実が未収取であった場合、占有者は、その生産に費やした費用に権利を有し、また、占有時間に比例する収穫正味生産物の一部に権利を有する。

負担は2人の占有者間に同じように按分される。

物の所有者は、望むときは、善意の占有者に、耕作および未収取の果実の採取を成し遂げる権能を、耕作費用の一部の補償および(占有者に)帰属する正味生産物の補償として、付与できる。なんらかの理由でこの付与を承諾したくない善意の占有者は、他の方法で補償を受ける権利を失う。

453

必要費は全占有者に償還される。しかし、善意の占有者のみは、満足を得るまでその物を留置できる。

有益費は、占有回復者が、費用を支払うか、または、物が得た価値の増加分を支払うか選択して、留置権を有する善意の占有者に償還される。

454

純粋に奢侈または単なる楽しみの費用は善意の占有者に償還されない。しかし、善意の占有者は、(引き離しが)損傷を引き起こさなく、占有承継人が費用を償還したくない場合は、主物を飾る装飾品を持って行くことができる。

455

悪意の占有者は収取された果実および適法な占有者が収取できた果実を返還する。そして、物の保存に費やした必要費を回復する権利のみを有する。奢侈と楽しみの改善に費やした費用は悪意の占有者には償還されない。しかし、悪意の占有者は、その者の費用が投じられた(奢侈)物体を、(主)物が損傷されることなく(引き剥がせ)、また、適法な占有者が、その(奢侈)物体を占有開始時に(奢侈)物体が有する価格を償還して自己のものとすることを好まない場合、自己のものにすることができる。

456

自然にまたは時の経過でもたらされる改善は、占有を獲得した者の利益となる。

457

善意の占有者は、故意でなされたと証明される場合を除いて、占有する物の損傷または喪失の責めを負わない。悪意の占有者は、全ての場合、また、その物の適法な占有者への引渡しが遅れ不可抗力で発生した場合でも、占有する物の損傷または喪失の責めを負う。

458

占有を取得する者は、その物を取得したときには存在しない改良に支払う義務はない。

459

 過去の自己の占有を証する現在の占有者は、反対の証明がない間は、その中間においても占有していたと推定される。

460

占有者はその占有を(次の場合)失う:

   ①物の放棄により、

   ②有償または無償名義での他人への譲渡により、

   ③物全部の破壊もしくは滅失により、または、それが商取引きの外に置かれることにより、

   ④旧占有者の意思に反しても(他人の)新占有が1年以上続いた場合、その他人による占有により。

461条:

 動産の占有は、占有者の支配下にある間は、たとえ、その者が偶発的にその(動産の)所在が分からなくなっても、喪失したとはみなさない。

462条:

 不動産および物権の占有は、抵当法の規定に従わないと、第三者を害しての(取得)時効の効果について喪失または移転したとはみなさない。

463条:

 他人の物を単なる所持者として享受または留保する者が実施するまたは認める、占有に関係する行為は、所有者がその者にその行為を実施するための明示の権能を与えていない限り、または、事後にそれを追認していない限り、所有者に義務を課さず、または、害を与えない。

464条:

善意取得された動産の占有は、権原と同一である。但し、動産を遺失した者、または、不法に奪われた者は、占有している者からその動産を回復することができる。

 遺失または盗まれた動産の占有者が善意でそれを公売(venta pública)で取得した場合は、所有者はその価額を償還しないと回復を得ることはできない。

 また、政府の認可で設立された質屋に質に入れられた物の所有者は、質入した者が誰であろうと、その質屋に質額と満期の来た利息を前もって支払わないと、回復を得ることはできない。

 証券取引所(Bolsa)、定期市(feria)または市場で取得した物、または、適法に設立され同種の物の取引に通常従事している商人から取得した物については、商法の規定に従う。

465条:

 猛獣は、我々の支配の下にある場合のみ、占有される。人に飼われているまたは飼い馴らされた動物は、占有者の家に戻る習慣を保持している場合は、家畜と同一視される。

466条:

 不当に喪失させられた占有を法に従って回復する者は、結果としてその者の利益になる全ての効果について、中断なくそれを享受していたとみなされる。