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(スペイン民法)                 元司法書士 古閑次郎

(平成27年3月見直し修正)

3編 第2章:贈与

(第1節:贈与の性質)

618

贈与は、ある者がある物を、それを受ける他の者の利益に、無償で処分することによる譲与行為である。

619

ある者にその効用のため、または、贈与者に提供される役務のためになされる贈与も、請求可能な債務を形成しないと贈与であり、または、受贈者に贈与物の価値以下の負担を課すものも贈与である。

620

贈与者の死亡により効力を生じるべき贈与は終意処分の性質を共にし、遺言相続の節で定められている規定により規律される。

621

生存者間で効力を生じるべき贈与は、本章で決定されていない事項については契約および債権・債務の一般的規定により規律される。

622

有償原因を持つ贈与は契約の規則により、また、報償的贈与(remuneratorio)は本章により、課される負担の価額を超える部分について規律される。

623

贈与は、贈与者が受贈者の承諾を知ったときから完成する。

(第2節:贈与または受贈できる者)

624

契約行為ができる者および自身の物を処分できる者は全て贈与をなすことができる。

625

受贈について特に法律により無能力とされていない者は全て贈与を承諾できる。

626

契約行為ができない者は、その法定代理人の介入なしには、条件付きまたは負担付贈与を承諾できない。

627

胎児になされた贈与は、その出生が認められた場合に適法に代理する者が、承諾できる。

628

無能力者になされた贈与は、他の契約の外見の下で介在者により仮装してなされていても、無効である。

629

贈与は、承諾のときから贈与者に義務を課し、効力を生じる。

630

受贈者は、無効の罰を受けるという条件で(?) (so pena de nulidad)、自身で、または、事態に即した特別の(受任)権限(poder)もしくは包括的かつ十分な(受任)権限を持つ者を介して贈与を承諾しなければならない。

631

自身では贈与を承諾できない者を代理して贈与を承諾する者は、第633条が規定する通知および記載(anotación)をする義務を負う。

632

動産の贈与は口頭または文書ですることができる。

 口頭贈与には贈与物の同時引渡しが必要である。この要件が欠けると、文書でなされない場合、また、文書中に承諾が証されない場合は、効力を生じない。

633

不動産の贈与が有効になるには、贈与は公正証書によって、各々贈与される不動産と受贈者がなすべき負担の価額を表記して、なされなければならない。

 承諾は同じ贈与公正証書または別の証書でなすことができる。しかし、贈与者の生存中になされないと効力を生じない。

 別の証書でなされると、贈与者に真正な方式で承諾を知らせなければならなく、また、両方の証書にこの手続を記載する。

(第3節:贈与の効果と限界)

634

贈与者の目下の全財物またはその一部を、自己の状況に対応する生活レベルで生きるに必要なものを、完全な所有権もしくは用益権において、留保するという条件で、贈与することができる。

635

将来財物を贈与することはできない。

 贈与者が贈与時に処分できない物は将来財物とみなされる。

636

634条の規定に関わらず、何人も、遺言で与えまたは受けることができる以上のものを、贈与を介して与えまたは受けることはできない。

 贈与は、この程度を超える範囲で遺留分侵害(inoficioso)となる。

637

贈与が、複数人に一緒になされたときは、等分とみなされる。また、贈与者が別のことを措置していないと、それらの者達の間での増加権(derecho de acrecer)は与えられない。

 配偶者の両方に一緒になされた贈与はこの措置から除かれ、贈与者が別段の措置をしていないと、それらの者の間には増加権が発生する。

638

受贈者は、追奪(evicción)において贈与者に対応する権利および請求(訴)権を全部代位する。贈与者は、その代わり、贈与が負担付である場合を除いて、贈与物の瑕疵担保責任(saneamiento)を負わない。負担付の場合は、贈与者は負担の額に達するまで追奪に責任を持つ。

639

贈与者は、贈与物の内のある物を処分する権能、または、それらの負担で(?)(con cargo a ellos)ある金額(cantidad)を処分する権能を留保することができる。しかし、この権利を行使しないで死亡した場合は、留保された物または金額は受贈者に帰属する。

640

本法の第781条が規定する制限の下で、所有権をある者に、そして、用益権を他の者に贈与できる。

641

場合と状況の如何に係わらず贈与者の利益のためだけに取戻し(権)(reversión)を適法に設定することができる。但し、遺言代位(sustituciones testamentarias)ついて本法が規定するのと同じ場合に、また、同様な制限で他の者の利益のため取戻し(権)を設定できる。

 前項の規定に反して第三者の利益のために贈与者が設定した取戻し(権)は無効である。しかし、贈与の無効は生じない。

642

贈与者の債務を弁済する義務を受贈者に課して贈与がなされる場合は、特約で他の意思表示がないと、受贈者は以前に約定されたと見える債務を弁済する義務のみ負うものとみなされる。

643

債務弁済に関する約定が介在しないと、受贈者は、贈与が債権者を欺くためになされたときは、その債務にのみ責任を負う(?)(*注:本段については議論がある)。

 贈与がなされるとき贈与以前の債務を弁済するために十分な財物を贈与者が留保していなかったときは、債権者を欺いてなされたと推定される。

(4節:贈与の撤回と減殺)

644

子および卑属がいない者がなした生前贈与は、次の事実の一つの発生で撤回できる:

①贈与の後で、死児であっても、子を持つ場合。

②贈与がなされたときに贈与者が死亡したと考えていた子が生きている場合。

645

子の生存により贈与が撤回されると、贈与物、または、受贈者が売却していた場合その代金は贈与者に返還される。

 抵当権が設定されていると、贈与者は、被担保債権を弁済して抵当権を解除でき、その弁済額を受贈者に請求する権利を得る。

 財物を回復できないときは、贈与をなした時の価値で評価される。

646

子の以後の出生または生存による撤回権は、最後の子の出生から、または、死亡したと思われた子の生存の通知を受けたときから数えて5年の消滅時効にかかる。

 この請求権は放棄することはできなく、贈与者の死亡により子とその卑属に移転する。

647

受贈者が、贈与者が課した条件の一を履行しなかったときは、贈与は贈与者の請求で撤回される。

 この場合、抵当法により第三者について設定された制限とともに、受贈者がなした譲渡、および、贈与物の上に課した抵当権は無効となって、贈与物は贈与者に戻る。

648条:更に、贈与は、贈与者の請求で次の忘恩行為により撤回できる:

①受贈者が、贈与者の人格、名誉または財物に対して犯罪をなした場合。

②受贈者が、、当局の訴訟手続または公訴の原因となる犯罪の何かを(例え、それが証明されたとしても)贈与者に負わせる場合。ただし、その犯罪が受贈者自身、その配偶者またはその支配下にある子に対してなされた場合は除く。

③不法に(贈与者の)扶養を拒否する場合。

649

忘恩行為により贈与が撤回されたとしても、所有権登記での撤回請求の付記登記(記録)(anotación)以前になされた譲渡および抵当権は存続する。

 付記登記(記録)以後のものは無効となる。

650

前条第1段の場合、贈与者は、第三者に請求できない譲渡物の価額または抵当権設定された物の価額を受贈者に請求する権利を得る。

 贈与時にそれらの物の価額を定めるよう留意される。

651

644条の規定の一により、または、忘恩行為により贈与が撤回されるとき、および、遺留分侵害(inoficiosa)により減少させられるときは、受贈者は請求提起から果実の返還義務を負う。

 撤回が、贈与に課された条件の一の不履行に起因する場合は、受贈者はその財物の他に条件履行を止めたときから収受した果実も返還する。

652

忘恩行為によって贈与者に与えられる請求権は前もって放棄できない。この請求権は、贈与者がその事実と請求権行使の可能性を知ったときから、1年で時効にかかる。

653

この請求権は、贈与者が、可能であるが行使しなかった場合は、贈与者の相続人には移転しない。

 また、受贈者の死亡時に請求権が行使されていなかった場合は、受贈者の相続人に対して行使できない。

654

贈与者の死亡時に贈与者の財物の正味価額を計算し、第636条の規定に従って遺留分侵害となる贈与は超過分について減殺されなければならない。しかし、この減殺は、贈与者の存命中は贈与が効力を有すること、および、受贈者が果実を自己のものとすることについて障害とはならない。

贈与の減殺については本節および本法820条と821条の規定に従う。

655

贈与の減殺を請求できる者は、遺留分権者または遺産の持分権者およびそれらの相続人もしくは承継人(causahabientes)である。

 前段に表示されている者は贈与者の存命中は、明示の宣言によっても、または、贈与に同意を与えても、その権利を放棄できない。

 受贈者、持分権者でない受遺者および死亡者の債権者は減殺を請求できない、また、減殺を利用することもできない。

656

2以上の贈与があるとき、それら全ての贈与が(贈与者の)処分可能な範囲に入らない場合は、超過分に関しては期日が新しい贈与が減殺される。