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(スペイン民法)                 元司法書士 古閑次郎

(平成27年3月見直し修正)

3編 第3章:相続

(第1節:遺言)

(第1款:遺言による処分能力)

662

法が明示的に禁止していない者は遺言をすることができる。

663

遺言無能力者は次の者である:

14歳未満の男女

② 通常または偶発的に法的判断力が欠如している者

664

精神障害の前になした遺言は有効である。

665

遺言能力に係る宣告を含んでいない判決により無能力とされた者が遺言の作成を望んでいるときは、いつでも、公証人は、その無能力者を前もって知っている2人の能力者を指定し、これらの者がその能力に責任を持つときは、(遺言書を)認証する。

666

遺言者の能力を評価するには遺言作成時の遺言者の状態のみが考慮される。

(第2款:遺言一般)

667

ある者が、その死亡後のためにその全財物またはその一部を処分する行為を遺言と呼ぶ。

668

遺言者はその財物を相続名義(a título de herencia)でまたは遺贈名義で処分できる。

疑義がある場合は、遺言者が実質的に相続人(heredero)という語を用いていなくとも、その意思がこの概念に明らかに近い場合は、その処分は包括名義または相続名義でなされたものに相当する。

669

2人以上の者が、互いの利益に、また、第三者の利益になすと言えども、共同でまたは同じ遺言書で遺言することはできない。

670

遺言はまったく一身専属的な行為である。その作成を、全部または一部でも、第三者の裁量に委ねることはできなく、また、受任者もしくは代理人を介してなすことはできない。

また、相続人または受遺者の指名の存続(?) (subsistencia)を第三者の裁量に委ねることはできなく、また、名前だけ(nominalmente)で指名されるときの承継すべき割合の指定を第三者の裁量に委ねることはできない。

671

遺言者は、親族、貧者または福祉施設のような特定のクラスに包括的に残す(遺産)数額の分配、および、その数額を振り当てるべき者または施設の選定を第三者に委任することができる。

672

死亡後に遺言者の住居またはその外で発見される証書もしくは私文書を参照して、相続人指定または遺贈について遺言者がなす処分は、その証書もしくは私文書が自筆証書遺言の要件を満たしていない場合は、無効である。

673

強迫、偽網または詐欺で作成された遺言は無効である。

674

ある者が自由にその終意を作成することを強迫、偽網または詐欺で妨げた無遺言相続人は、刑事責任を課されることは別として、相続権を剥奪される。

675

遺言者の意思は別であると明白に表示されないと、遺言処分は全てその言葉の字義上の意味で解釈されなければならない。疑いがある場合は、その遺言の趣旨に従って遺言者の意思に尤も適するものが採用される。

  遺言者は、(遺言が)法律により無効と宣告される場合に遺言が取消されることを禁止することはできない。

(第3款:遺言の方式)

676

遺言は普通方式または特別方式ですることができる。

普通方式遺言は、自筆証書で、口頭遺言(abierto)で、または、秘密証書ですることができる。

*注:口頭遺言は、我が国の公正証書遺言と類似である。)

677

軍人遺言、在船者遺言および外国でなされた遺言は特別方式の遺言とみなす。

678

遺言者が第688条で規定される形式および要件を満たして自身で書く遺言書を自筆証書遺言書と呼ぶ。

679

遺言者がその最後の意思をその行為を認証すべき者たちの面前で表示し、その者達がその遺言で処分されることを承知する場合、その遺言は口頭遺言である。

680

遺言者が、その最後の意思を明らかにすることなく、その意思はその行為を認証すべき者たちに提示する封書の中にあると宣言するとき、その遺言書は秘密証書遺言書である。

681

遺言において証人となることができない者は:

1:第701条の規定以外の場合、未成年者。

2:目の見えない者、完全な聾者または唖者。

3:遺言者の言語を理解できない者。

4:正常な判断力が無い者。

5:認証する公証人の配偶者または4親等内の血族もしくは2親等内の姻族、および、その公証人と仕事上の関係がある者。

682

口頭遺言では、相続人及びその遺言で指定されている受贈者、それらの者の配偶者、それらの者の4 親等内の血族または2親等内の姻族は、証人となることはできない。

  この禁止には、遺贈が或る動産を目的とするとき、または、相続財産と比較して重要でない量のときは、受贈者、その配偶者または親族は含まれない。

683

ある証人が無能力者と宣言されるためには、その無能力の原因が遺言作成のときに存することが必要である。

684

遺言者が公証人の知らない言語でその意思を表示するときは、作成場所で遺言処分を公証人が使用する公式言語に翻訳する、遺言者が選んだ通訳の立会いが要求される。証書は2つの言語で記述され、遺言者が採用した言語はどちらであったかが示される。

  口頭遺言書、および、秘密証書遺言書の記録書(acta del cerrado)は、遺言者が表明する外国語で、および、公証人がその外国語を知っていても公証人が採用する公式言語で、記述される。

685

公証人は遺言者との面識がなければならない。面識がない場合は、遺言者と面識がありかつ公証人が面識がある2人の証人により、または、本人確認を目的とする公的機関が発行する文書を用いて、本人確認がなされる。また、公証人は、その判断で、遺言者が遺言するに必要な法的能力を有していることを確認しなければならない。

  700条と701条の場合、証人は遺言者と面識がある義務を有し、その能力を確認することに努める。

686

前条が規定する方式で遺言者の本人確認ができない場合は、この状況が公証人により、または、場合によっては証人により、宣言される(declararse)。この際は、遺言者が本人確認のため提出した文書と自身の人的特徴が要約される。

 そのような事由で遺言が非難攻撃される場合は、遺言者の同一性の証明責任はその真正さを主張する者に帰属する。

687

作成において本章がそれぞれ規定する要式に適合していない遺言書は無効である。

(第4款:自筆証書遺言書)

688

自筆証書遺言書は、成年者のみ作成することができる。

  この遺言書が有効であるには、遺言者が作成年月日を明示してすべて自書し、署名しなければならない。

  字句の抹消、修正または行間挿入の場合は、遺言者は署名してそれらをすることができる。

  外国人は自己の言語で自筆証書遺言書を作成できる。

689

自筆証書遺言書は、死亡日から数えて5年以内に遺言者の最後の住所地または死亡地の第一審裁判官に提出して、原本集成化(protocolizarse)しなければならない。この要件を欠くと、遺言書は無効である。

690

自筆証書遺言書の保管者は、遺言者の死亡の通知を受けたときは裁判所にそれを提出しなければならない。10日以内に実行しない場合、遅延により発生する損害を賠償する責任を負う。

  また、相続人、受遺者、遺言執行者または他の点で遺言に利害関係がある何人も遺言書を提出できる。

691

自筆証書遺言書が提出され、遺言者の死亡が確認されたときは、裁判官は、それが密封封書である場合は、その封書を開封し、書記官と一緒に職印を全ての用紙に押し、遺言者の文字と署名を知っていて、遺言書が遺言者自身の手で書かれて署名されたことには合理的疑いが認められないと宣言する3人の証人を通してその同一性を確認する。

  適切な証人がいない場合、または、(証人が)検査に疑いを持つ場合は、裁判官が適当と判断すると、筆跡鑑定人を採用することができる。

692

前条に規定する手続の実行のため、遺言者の生存配偶者(それがいれば)、卑属および尊属、それらがいないときは、兄弟ができるだけ早く呼出される。

  これらの者達がその地区内に居住していない場合、その存在が知れていない場合、またはそれらが法定代理人を欠く年少者もしくは無能力者である場合は、呼出しは検察庁(Ministerio Fiscal)に対してなされる。

  呼出された者は、当該手続実行を目撃でき、また、行為で、口頭で、遺言の真正について適宜の検証をなすことができる。

693

裁判官は、遺言書の同一性が証明されたと判断すると、実行された手続書類と共に、公証人の対応する記録原簿の中に原本集成化させる。公証人は、利害関係人にその謄本または適当な証明書を発行する。他の場合は、原本集成化を拒否する。

  裁判官の決定はなんであっても、異議申し立てに係わらず、また、対応する裁判に訴える利害関係人の権利は保護されて、効力を有する。

(第5款:口頭遺言)

694

口頭遺言書は、作成地で有効に活動できる公証人の面前で、作成されなければならない。

本款で明文で規定されている場合はこの規則から除かれる。

695

(口頭)遺言者は口頭でまたは文書でその終意を公証人に表明する。終意に従って作成年月日・時刻と場所が記載された遺言書が公証人により作成され、そして、遺言者がそれを自身で読む権利があることが告げられ、(遺言書が)その終意に合致していると遺言者が表明するために、公証人はそれを大声で読む。意思に合致していると、署名できる遺言者は即座に署名し、場合に応じて、参集すべき証人およびその他の者たちが署名する。

  遺言者が署名できないと表明すると、その者の頼みで証人の一人が代わって署名する。

696

公証人は、遺言者と面識がある、または、適法に本人確認したと認証(dar fe)する、それが欠けていると、第686条が規定する宣言(declaración)を実行する。更に、その判断で遺言者が遺言書作成に必要な法的能力を有していると証する。

697

作成行為に2人の能力ある証人が参集しなければならない場合は:

① 遺言者が、遺言書に署名することができないと表明したとき。

② 遺言者が、署名できるが、盲者であるとき。または、自身で遺言書を読むことができないと表明したとき。

③ 遺言者または公証人が要請したとき。

698

作成には、また、次の者が参集しなければならない。

① もし存在すると、証書証人としても介入できる、知見証人。

② 禁治産(無能力)遺言者を検査した専門家。

③ 公証人が使用した公式言語に遺言者の意思を翻訳した通訳。

699

本款に規定される手続全ては、遺言書を読むことから開始するただひとつの行為で実行され、一時的な事故により生じる可能性がある中断を除いて、いかなる中断も適法でない。

700

遺言者が差し迫った死亡の危険にある場合は、公証人を要せず、5人の能力者である証人の面前で遺言をなすことができる。

701

流行病の場合も同様に公証人の介入を要せず、16歳以上の3人の証人の面前で遺言をなすことができる。

702

2条の場合、可能であれば遺言書が書かれる。可能でないと、証人が書くことができなくとも、遺言は有効である。

703

3条の規定によりなされた遺言は、死亡の危険が去った後、または、流行病が止んだ後2ヶ月経過すると、無効となる。

 遺言者が前述の期間内に死亡した場合、書面で作成されようと、口頭でなされようと、死亡後3ヶ月以内に管轄権を有する裁判所に公正証書に引上げるべく提出されないと、同様に効力を失う。

704

公証人の認証なしに作成された遺言は、公正証書に引上げられなく、かつ、民事訴訟法が規定する要式で原本集成化(protocolizarse)されない場合は、効力がない。

705

各々の場合について規定手続を遵守していないとの事由で口頭遺言が無効と宣言されると、それを認証した公証人は、その瑕疵がその者の悪意または言訳できない怠慢もしくは不知から生じた場合、生じる損害賠償の責任を負う。

(第6款:秘密証書遺言)

706

秘密証書遺言は書面でしなければならない。

遺言者が自ら自身の言葉で書いたときは、末尾に署名する。

機械的方法または遺言者の要請で他人が書いたときは、遺言者は各頁と遺言書の末尾に署名する。

遺言者が署名できないときは、その頼みで他の者が、不能の理由を表示して、遺言書の末尾と各頁に署名する。

いずれにしても、署名の前に、訂正された語、抹消された語または行間に書かれた語は有効であると注記される(salvarse)

707

秘密証書遺言書の作成では次の方式を遵守する:

① 遺言が記載されている用紙は、破らなければ取り出せない封印された封筒に入れる。

② 遺言者は、封印された遺言書を持って、それを認証する公証人の面前に出頭する。または、それを認証行為の中で封印する。

③ 公証人の面前で遺言者は自身で、または、第684条の規定による通訳者を介して、提出する封筒にその者の遺言が入っていると表明する。その際、その者自身で、他人の手でまたは機械的手段で書いたか、および、自身またはその頼みで他人が末尾と全頁に署名したかを表明する。

④ 公証人は、封印した印紙の番号と記号を表示して、また、遺言者を知見している、または、第685条と686条の規定の様式でその人物の同一性を確かめたとの証明をなし、さらに、自身の判断で遺言者に遺言をなす法的能力があることの証明をして、遺言の封筒にその作成証明書(acta)を貼る(extender)

⑤ 証明書が貼られ、読上げられると、遺言者、場合によっては参集すべき者達は、署名できると、それに署名する。そして、公証人が、その職印と署名でもって認証する。

   遺言者が署名することができないと宣言すると、この場合に参集すべき能力のある2人の証人の1人が遺言者の頼みでその代わりに署名する。

⑥ 証明書にもまたこの事情が、作成場所、時刻、年何月以外に、表明される。

⑦ 作成行為には2名の資格を有する証人が、遺言者または公証人がそう要請するときは、参集する。

708

秘密証書遺言は、盲者及び読むことができない者はすることができない。

709

言葉では意思表示できないが、書くことができる者は、次の規定を遵守して秘密証書遺言書を作成できる:

① 遺言者が遺言書に署名しなければならない。その他の要件については第706条の規定による。

② それを提出するとき、遺言者は封筒の上部に、この中にその者の遺言が封入されている旨を、どのようにして書き、自身で署名したことを表示して、公証人の面前で記入する。

③ 遺言者の記入に続いて、公証人は、前項の規定およびこの場合に適用される第707条に規定されるその他の規定が履行されたことを認証して、作成証明書を交付する。

710

秘密証書遺言を認証すると、公証人は、作成証明書の認証謄本を現行の原本集成簿(protocolo)の中に挿入した後、遺言書を遺言者に引渡す。

711

遺言者は、秘密証書遺言書を自身で保管でき、信用する者に保管を委託でき、または、認証した公証人に資料保管所(archivo)に保管するよう寄託することができる。

最後の場合、公証人は遺言者に受領書を渡し、現行の原本集成簿、作成証明書の謄本の余白または続きに遺言書は自己の管理下にあると証する。遺言者が後で受取ると、当該覚書の続きに受領署名をする。

712

秘密証書遺言書を保管している公証人または保管人は、遺言者の死亡を知った後、管轄の裁判官にそれを提出しなければならない。

  10日以内に実行しないときは、その怠慢で発生した損害賠償の責任を負う。

713

故意に前条後段で定める期間内に保管している秘密証書遺言書を提出しない者は、そこで定める責任以外に、相続の全権利を、その権利を無遺言相続人としてまたは遺言相続人もしくは受遺者として有する場合、喪失する。

  故意に遺言者の住居またはその保管者から秘密証書遺言書を盗んだ者およびそれを隠し、毀損し、または他の方法で利用できなくする者は、刑事責任を負うことは別として、この同じ罰に陥る。

714

秘密証書遺言書の開封と原本集成化(protocolización)には民事訴訟法の規定が適用される。

715

秘密証書遺言書は、その作成が本節の方式を遵守していないと、無効である。そして、それを認証した公証人は、その瑕疵がその悪意または言訳できない怠慢もしくは不知から生じた場合、生じる損害の責任を負う。しかしながら、遺言者が全て自身で書いて署名し、また、自筆証書遺言書としてのその他の条件を満たすと、自筆証書遺言書として有効である。

(第7款:軍人遺言)

716

戦時では、戦場にある軍人、志願兵、人質(rehenes)、捕虜およびその他軍隊で雇用されている個人またはこれに従う個人は、最低でも大尉の階級を有する将校の面前でその遺言をなすことができる。

この規定は外国にある軍隊の(被雇用・従事)個人についても適用する。

遺言者が疾病または傷を負っている場合は、司祭または遺言者を治療している医者の面前でなすことができる。

分遣隊(destacamento)にいる場合は、階級が下位でも、遺言者に命令を下す者の面前でなすことができる。

本条の全ての場合、能力者である2人の証人の同席が必要である。

717

前条に述べる者達は、また、この場合に公証人の役割を果たす、主計官(Comisario de guerra)の面前で秘密証書遺言を、第706条と次条以降の規定を遵守して、なすことができる。

718

2条に従って作成された遺言書はできるだけ短時間に総司令部、そこを通して陸軍大臣(Ministro de la Guerra)に送達されなければならない。

陸軍大臣は、遺言者が死亡すると、遺言書を死亡者の最後の住所地の裁判官に、(その裁判官が)職権で相続人および相続利害関係人を呼出すために、送達する。最後の住所が知れないと、マドリッドの裁判官の筆頭(Decano)に送達する。相続人および相続利害関係人は、公正証書にするよう、また、民事訴訟法で規定される方式に原本集成化するように申請しなければならない。

  遺言書が秘密証書のときは、裁判官は、検察庁の召喚と介入を持って民事訴訟法規定の方式で職権でその開封手続に進み、開封後は、相続人および利害関係人に知らしめる。

719

716条の遺言は、遺言者が戦場を離れたときから4カ月で失効する。

720

会戦、戦闘、攻撃および戦争行動の全危険(状況)においては、2人の証人の面前で口頭の軍人遺言をなすことができる。

しかし、この遺言は、遺言者が遺言をなした危険から助かった場合は、効力を失う。

助からなかったとしても、軍隊に従っている軍法会議理事(Auditor de guerra)または法務官の面前で証人が形式を整えないと、遺言は無効となる。その後、第718条に規定される方式で手続される。

721

軍人遺言が秘密証書である場合は、第706条と第707条の規定が遵守される。しかし、口頭遺言について第716条が要求する将校と2人の証人の面前で、それらの者達および可能であれば遺言者に作成証明書に署名させて、作成される。

(第8款:在船者遺言)

722

航海している者の口頭遺言または秘密証書遺言は次の方式でなされる:

  船が軍艦のときは、会計官(Contador)またはその機能を果たす者の面前で、遺言者を知っている2人の能力者である証人が同席して作成される。更に、船長またはその代理をする者がそのVisto Bueno(検査済)を記載する。

商船では船長またはその代理をなす者が、2人の能力者である証人の支援で、遺言書を認証する。

  これらの場合、乗客が居れば、証人は乗客の中から選ばれる。しかし、少なくとも1人は署名できなければならなく、その者は、遺言者が署名できないときに、代わって署名する。

  遺言が口頭遺言の場合は、第695条の規定も遵守される。秘密証書遺言の場合は、本節の第6款の規定が、証人の数と公証人の介入に関することを除いて、遵守される。

723

軍艦の会計官の遺言および商船の船長の遺言は、その他の者についての前条の規定に従ってその職務についてそれらの者に替わるべき者によって認証される。

724

公海でなされた口頭遺言は艦長または船長が保管し、航海日誌にそれらの記載がなされる。同じ記載が自筆証書遺言および秘密証書遺言についてなされる。

725

スペインの外交または領事使節が居る外国の港に着いた場合は、軍艦の艦長または商船の船長は口頭遺言または秘密証書の作成記録および日誌から転記された記載の謄本をその使節に引き渡す。

 遺言書または記録の謄本には原本と同じ署名が、それをなした者が生存しかつ在船していると、なされなければならない。その他の場合は、遺言に介入した者たちの中で在船する者たちが署名して、遺言を受けた会計官または船長、またはそれらの者の代理者により認証される。

 外交または領事使節は、遺言書の謄本または秘密証書のときはその作成記録の謄本を封印して、文書によって引き渡し手続をとり、対応する手順で海軍大臣(Ministro de Marina)に日誌の記載とともにその謄本を発出し、海軍大臣は海軍省の文書室に保管するよう命じる。

 引渡しをなす艦長または船長は、外交もしくは領事使節から引渡しをした旨の証明書を取得し、航海日誌にその証明の記載をなす。

726

軍艦または商船である船舶が、スペイン王国の最初の港に到着するときは、艦長または船長は遺言書原本を封印して、日誌から抽出した記載と一緒にその地域の海運当局に引き渡す。また、遺言者が死亡している場合は、それを証する証明書も一緒に引き渡す。

 引渡しは前条に規定する様式で証され、海運当局はそれを遅滞なく海軍大臣に発出する。

727

遺言者が死亡して、口頭遺言の場合は、海軍大臣は第718条に規定される措置をとる。

728

スペイン船舶の中で外国人が遺言した場合は、外交ルートで対応する手段が取られるように、海軍大臣は遺言書を外務大臣に発出する。

729

遺言が自筆証書で、遺言者が航路中に死亡したときは、艦長または船長は遺言書を保管するために回収し、日誌にそのことの記載をなして、スペイン王国の最初の港に到着するときに、前条に規定される様式で、および、規定される効果(発揮)のためその地域の海運当局に引き渡す。

 遺言が秘密証書であるときにも、遺言者がその死亡のときに遺言書を保管していた場合、同様な措置が取られる。

730

この款の規定に従って作成された口頭および秘密証書遺言書は、遺言者が通常の様式で遺言できる地点に上陸してから数えて4月経過すると、効力を失う。

731

海難の危険がある場合は、第720条の規定が軍艦または商船の乗員と旅客に適用される。

(第9款:外国でなされた遺言)

732

スペイン国民は国外で、その居住国の法令に規定される様式に従って、遺言することができる。

 また、公海における外国船での航海中では、その船舶が所属する国の法令に従って遺言することができる。

 更に、自筆証書遺言を、この遺言を認めていない国にあっても、第688条の規定に従ってなすことができる。

733

スペイン国民が外国でなす(第669条で禁止されている)共同遺言は、それをなした国の法令が認めていても、スペインでは無効である。

734

外国に居住するスペイン国民は、作成地で公証人機能を行使するスペインの外交官または領事の面前で、口頭遺言または秘密証書遺言をなすことができる。

 これらの場合は、本節の第5款と第6款に規定される全様式を各々遵守する。

735

外交または領事使節は、自己の署名と押印で認証して、口頭遺言の謄本または秘密証書遺言の作成記録の謄本を、外務大臣にその文書保管室に納めるべく、送付する。

736

スペイン国民がその自筆証書または秘密証書遺言を託した外交または領事使節は、遺言者が死亡したときは、死亡の証明書とともに、それを外務大臣に送付する。

 外務大臣は、死亡の報せを、相続利害関係者が遺言書を受取り、規定された様式で自己の手続が取れように、マドリッドの公報(Gaceta de Madrid)で公告する。

(第10款:遺言の撤回(revocación)と無効)

737

遺言者が遺言において撤回しないとの自己の意思または決心を表示していても、全ての遺言上の処分は原則的に撤回可能である。

 将来処分の削除条項は置かれていないものとみなされ、また遺言の撤回を有効にしないように遺言者がそこで指示する条項は、確たる語または記しで撤回をなしていない場合は、置かれていないものとみなされる。

738

遺言は、遺言するために必要な手続(solemnidades)をもってして、その全ておよび一部を撤回することができる。

739

前の遺言は、その後の完全な遺言により、遺言者が後の遺言中に前遺言の全部または一部がなお存続するとの意思を表明していないと、法律上撤回された状態になる。

 しかしながら、遺言者が後の遺言をその後撤回する場合、および、前の遺言が有効であるとの明示的な自己の意思を表明する場合は、前の遺言はその効力を回復する。

740

撤回は、たとえ、第二の遺言が相続人もしくはその遺言で指定された受贈者の(相続)無能力により、または、相続人もしくはこれら受贈者の放棄により失効しても、その効果を生じさせる。

741

子の認知は、認知がなされた遺言が撤回されても、その遺言が他の処分を含有していなくても、または、遺言のその他の処分が無効であっても、その法的効力を失わない。

742

遺言者の住居内にあり、封筒もしくは封印が破かれている、または、それを認証する署名が消され、削られ、もしくは、修正されている秘密証書遺言は撤回されたものと推定される。

 この遺言書は、しかしながら、遺言者の意思または認識なしにその不完全さが発生したと証明される場合、または、遺言者が痴呆状態にあると証明されると、有効である。しかし、封筒または封印が破られている状態では、その有効性のためには遺言の真正さ(autencidad)の証明が必要である。

 遺言書が他の者の管理下にある場合は、その瑕疵はその者から生じているとみなされ、また、封筒または封印が破かれている場合は、その真正さが証明されるのでなければ、その遺言は有効でない。また、封筒と封印は完全であるが、署名が消され、削られまたは修正されている場合は、もし、同じ遺言者によりこの状態で封書が引渡されたと証明されないならば、遺言は有効である。

743

本民法典で明示的に規定されている場合にのみ、遺言は失効し、または、遺言上の処分は全部または一部で無効となる。