(スペイン民法)                 元司法書士 古閑次郎

                       (平成27年3月見直し修正)

3編 第3章 相続

(第6節:持戻し(colación)と分割(partición)

(第1款:持戻し)

1035

一つの相続に他の必然相続人(*注:遺留分を持つ相続人)と競合する必然相続人は、被相続人からその存命中に嫁資、贈与または他の無償名義で受領した財物もしくは価値を、遺留分の調節において、また、(遺産)分割の計算においてそれらを算定するために、相続財産に持ち戻さなければならない。

1036

持戻しは、贈与者(*被相続人)が明示的にしなくとも良いと定めた場合、または、受贈者(*必然相続人)が相続放棄した場合は、贈与を遺留分侵害により減ずべき場合を除いて、必然相続人間に生じない。

1037

遺言で残されたものは、遺言者が別段の定めをしていない場合、持戻しには係らないものとみなす。但し、いづれにしても、遺留分は保護される。

1038

孫が、その叔父(伯父)または従兄弟と競合して、父を代襲して祖父を相続するときは、父が存命していたら持ち戻しすべきもの全部を、孫が父を相続しなかったとしても、持ち戻す。

 また、遺言者が反対の定めをしていないときは、被相続人からその存命中に受領したものを持ち戻す。反対の定めをした場合は、共同相続人の遺留分を害しないときは、その意思が尊重されなければならない。

1039

父母は、その尊属の相続において、尊属がそれら(父母)の子に贈与したものを持ち戻す義務を負わない。

1040

また、子の配偶者になされた贈与を持ち戻すことは必要ない。但し、父が、贈与を(子)夫婦に共同してなした場合は、子は贈与の半分を持ち戻す義務を負う。

1041

扶養、教育、疾病の治療(疾病が特別のものであっても)、技能取得、通常の身の回り品の費用および慣習的贈り物は持戻しには係らない。

 また、障害のある子または卑属の特別な必要を満たすために父母および尊属が費やした費用は持戻しにかからない。

1042

父(母)がその子に専門的職業または芸術的経歴を与えるために費やした費用は、父(母)が持ち戻すように定めるとき、または、遺留分を害するときを除いて、持戻しには係らない。しかし、持戻しにかかるときは、子が父母の家に父母と同居していて費やしたであろう費用を、当該費用から減ずる。

1043

父(母)がその子を徴兵くじ(suerte de soldado)から免れさすため、子の債務を弁済するため、子が名誉称号を獲得するため費やした金額およびその他の類似費用は、持戻しにかかる。

1044

宝石、衣服および身の回り品からなる婚姻の贈り物は、遺言の自由処分できる額の1/10を超える部分を除いて遺留分侵害として減殺されない。

1045

持戻し及び分割にかかるものは贈与物自体ではなく、遺産が評価されるときのその価値である。

 贈与の後での物理的増減及びそれの偶発的または帰責的滅失は、受贈者の負担と危険または利益である。

1046

夫婦両方でなした嫁資または贈与は、それらの各一方の遺産に半分持ち戻される。一方のみがなした嫁資または贈与はその遺産に持ち戻される。

1047

受贈者は、遺産総体中で、既に受領したものを減じて取得する。その共同相続人は可能な限り同じ性質、種類と品質の財物で同等な物を取得する。

1048

贈与物が不動産である場合で、前条の規定が実行できないとき、共同相続人は、金銭または相場のある有価証券で平等に扱われる権利を取得する。遺産中に金銭も相場のある有価証券もない場合は、他の財物を公売で必要な量売却する。

 贈与物が動産のときは、共同相続人は、その自由な選択で、遺産中の他の動産において、正当な価格により、平等に扱われる権利のみを取得する。

1049

持戻しに係る財物の果実または利息は、相続開始の日から遺産に組み込まれる。

 それらを調節するためには、持ち戻されたものと同じ種類の相続財物の収益と利息に着目する。

1050

持戻し義務について、または、持ち戻すべき目的物について共同相続人の間で紛争が生じる場合、対応する保証を提供すると、そのことにより遺産分割を受けられないことはない。

(第2款:分割)

1051

共同相続人は何人も、遺言者が明示的に分割を禁じている場合を除いて、遺産の不分割の義務を負わない。

 但し、禁止しているとしても、社団(組合)(sociedad)が消滅する事由の一により、分割は常に生じる。

1052

自己の財物の自由な管理・処分ができる共同相続人は、いつでも遺産分割を請求できる。

 無能力者および失踪者の代わりにその法定代理人が請求することができる。

1053

夫婦の一方は、他方の介入なしに遺産分割を請求することができる。

1054

条件付きの相続人は、条件成就までは分割請求できない。しかし、その他の相続人は、条件成就する場合の前者の権利を正当に保証して、分割請求できる。また、条件の消尽、または、実行できないと知れるまでは、分割は暫定的とみなされる。

1055

分割前に共同相続人の一人が、2人以上の相続人を残して死亡した場合は、それらの一人が請求することで足りる。但し、この最後の方法で介入する者全員は単一の代襲(representación)の下で現れなければならない。

1056

遺言者が生前行為または遺言により自己の財物の分割をなしているときは、必然相続人の遺留分を害しない限度で、その分割により移転する。

企業の存続に留意して、または、その家族の利益のため、ある経済的経営設備を不分割で保存すること、または、資本共同体もしくはこれらのグループの統制を保持することを希望する遺言者は、その他の利害関係人にその遺留分は金銭で弁済されるように定めて、本条で譲許される権能を行使できる。遺産外の現金で保証を実現させ、また、遺言者または遺言者が指定した分割清算人により期限の先延ばしを、遺言者の死亡から5年を超えない範囲で、実現させると、このような目的のために、遺産中に十分な金銭が弁済のため存する必要はない。更に、それらの債務消滅の他のいかなる手段をも適用することができる。弁済の方式が設定されていない場合は、遺留分権利者は何人も相続財物で自己の遺留分を請求することができる。第843条と第844条第1段の規定はこのように実現される分割には適用されない。

1057

遺言者は、生前行為または遺言により共同相続人でない者に分割をなす単純な権能を委託することができる。

 遺言がなく、そこで指定された分割清算人がなく、または、その職務が空席の場合は、相続(プラス)資産の少なくとも50/100を代表する相続人と受遺者の請求により、住所が知れていたら、その他の利害関係人を召喚して、裁判官が、民事訴訟法の会計士(Peritos)指定の規定に従がって、選定分割清算人を指名することができる。このようになされた分割には、相続人と受遺者全員の明示の確認がないと、裁判所の承認が必要である。

 本条と前条の規定は、共同相続人の間に親権または後見に付されている者、または浪費、疾病または身体もしくは精神の障害による保佐に付されている者が存していても、適用される。しかし、これらの場合、分割清算人は、これらの者の法定代理人または保佐人を召喚して相続財物の棚卸をしなければならない。

1058

遺言者が分割をなさず、また、その権能を他人に委託しなかったとき、相続人が成年者で、自己の財物の自由管理ができる場合は、それらの者は、都合が良いと考える方法で遺産を分割することができる。

1059

成年者である相続人が分割をなす方式について互いに納得しないときは、その者の権利は、民事訴訟法に規定される方式で(権利を)実行するために、保護される。

1060

未成年者または無能力者が分割において適法に代理されるときは、裁判所の介入も承認も必要ではない。

 未成年者または無能力者を代理するために指定された裁判上の保護者(defensor judicial)は、裁判官が指定時に別の定めをしていない場合、裁判官の承認を得なければならない。

1061

遺産の分割では、分配部分(lotes)を形成して、または、共同相続人の各人に同じ性質、品質もしくは種類の物を分与して、可能な衡平を保持しなければならない。

1062

ある物が分割できない、または、分割すると価値が著しく損なわれるときは、ある相続人に、他の相続人には超過分を金銭で保証する条件で、分与することができる。

 しかし、公売で売却するには、第三者入札人を参加させて、相続人の一人が公売での売却を請求することで足りる。

1063

共同相続人は、分割においては、各人が相続財物から受領した収益および利息、相続財物になされた必要費と有益費、および、悪意または不注意で生じた損害賠償額を互いに支払わなければならない。

1064

共同相続人全員の共通の利益に費やされた分割費用は、遺産から控除される(deducirse)。それらの一人の特別な利益に費やされた費用は、その者の負担となる。

1065

分与または所有の権原証書(títulos)が、それに係わる不動産の取得相続人に引渡される。

 

1066

同一の権原証書に、複数の共同相続人に分与された複数の不動産、または、2人以上の共同相続人に分割された単一の不動産が表示されているときは、その証書は不動産に最大の利害関係を有する者の支配下に置かれ、他の者たちには認証謄本(copias fehacientes)が相続財産の費用で提供される。利害が均等の場合は、証書は、合意がないと、抽選で対応する者に引渡される。

 それを原本として、原本を所有する者は、その他の利害関係人がその提示を請求するときは、提示しなければならない。

1067

相続人のある者が、分割前に自己の相続権を第三者に売却した場合は、共同相続人の全員または何人も、このことを知ったときから数えて一月内に、買受価額を償還して、買主の地位に代位することができる。

(第3款:分割の効果)

1068

適法になされた分割は、各相続人に自己に分与された財物の排他的所有権を付与する。

1069

分割が実行されると、共同相続人は、分与された財物の追奪(evicción)および瑕疵担保(saneamiento)責任を互いに負う。

1070

前条の責任は次の場合にのみ終了する:

① 遺言者自身が分割をなしていたときで、遺留分を除いて、(分割について)反対のことを望んでいたことが明らかではなく、または、反対のことを望んでいたと合理的に推定されない場合。

② 分割時に明示的に約定されていたとき。

③ 追奪が分割後の事由で引き起されるとき、または、取得者の過失で発生したとき。

1071

共同相続人の相互の追奪担保責任は、自己の相続(プラス)資産に比例する。但し、共同相続人のある者が破産すると、その者の(責任)分は、(追奪されて)補償を受けるべき者に対応する部分を控除して、その他の共同相続人が同じ比率で受け持つ。

 破産者のために弁済をなした者は、破産者に対する自己の権利を、その財産状況が回復するときまで、保持する。

1072

債権が取立て可能として分与されると、共同相続人は相続債務者のその後の破産の責任は負わなく、ただ分割するときにその者の破産の責任を負うのみである。

 取立て不能と評価された債権については責任を負わない。但し、全部または一部が回収される場合は、回収されたものは相続人間に比例して配分される。

(第4款:分割の取消し)

1073

分割は、債務関係(obligaciones)と同じ事由で取消すことができる。

1074

また、分割は、分与時の財物の価値に注目して、1/4以上の損傷(lesión)の事由により取消すことができる。

1075

被相続人がなした分割は損傷の事由によっては取消しできないが、必然相続人の遺留分を害する場合、または、遺言者の意思が別であることが明らかか、そう合理的に推定される場合は、取消すことができる。

1076

損傷の事由による取消権は、分割時から4年間存続する。

1077

請求された相続人は、損害を補償するか、新たな分割手続に同意するか選択できる。

 補償は、金銭か損害が発生した物と同じ物でなすことができる。

 新たな分割に移行する場合は、その分割は、遺留分侵害を受けていなく、かつ、正当なもの以上を受けていなかった者には及ばない。

1078

自己に分与された不動産の全部または重要な部分を譲渡した相続人は、損傷による取消権を行使することはできない。

1079

遺産のある物またはある価値の脱漏は、損傷による分割取消しを生じさせないが、脱漏された物または価値でもって遺産を補完するか、それに追加する。

1080

相続人のある者を脱漏してなされた分割は、他の利害関係人側に悪意または故意(dolo)があったと証明されないと、取消されない。しかし、これらの者は、比例して対応する部分を脱漏者に弁済する責めを負う。

1081

相続人ではないが、相続人であると信じられた者に対してなされた分割は無効である。

(第5款:相続債務の弁済)

1082

債権者と認知された者は、弁済を受けるか、その債権総額が保証されるまで遺産分割が効力を持つことに対抗することができる。

1083

共同相続人の一人以上の者の債権者は、分割が詐欺でまたは自己の権利を害してなされないように自己の費用で分割に参加できる。

1084

分割がなされると、債権者は、限定承認していなかった相続人の何人にも全額で自己の債務の弁済を請求でき、または、限定承認している場合は、その相続した分の限度で請求できる。

 これらの場合、請求された者は、遺言者の定めによりまたは分割の結果により自己のみが債務の弁済の責任を負うとされていないと、その共同相続人を引き込む(citar y emplazar)権利を持つ。

1085

遺産で自己の持分に対応するもの以上を弁済した共同相続人は、その他の者にその比例部分を請求することができる。

 抵当権付き債務であることで、または、特定財産に基礎を置くことで、債務を完全に弁済したときも、同じ事が遵守される。この場合、その分割取得者は、債権者が自己の請求権をその分割取得者に譲ったとしても、また、債権者の地位に代位したとしても、その共同相続人に比例部分のみ請求することができる。

1086

相続不動産のある物が年金または永久的物権(carga real perpetua)の負担を課されていると、免除可能であっても、共同相続人の多数の同意でないと、その消滅手続きはなされない。

 そのように同意されない場合、または、負担が免除できないものである場合は、その不動産の価値からその負担の価値または元本(capital)が減じられ、この不動産は分配部分(lote)でまたは分与によりそれに当る者にその負担と伴に移行する。

1087

被相続人の債権者である共同相続人は、その債権の弁済を、相続人としての自己の比例部分を控除して、本章の第5節第5款の規定は別として、他の相続人に請求できる。

 

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