(スペイン民法)                 元司法書士 古閑次郎

(平成27年4月見直し修正)

第4編 第15章 質権、抵当権および収益質(anticresis)

(第1節:質権と抵当権の共通規定)

1857

次のものは質権および抵当権(設定)契約の基本的要件である:

①主たる債務の履行を保証するために設定されること。

②質物または抵当物が質権または抵当権設定者の所有に属すること。

③質権または抵当権設定者はその財物の自由処分権を有すること。有しない場合は、そのために法的に承認されていること。

 主たる債務に関係ない第三者は、自己の財物に質権または抵当権を設定して、その債務を保証できる。

1858

更に、主たる債務の期限が到来すると、債権者への支払いのために質権または抵当権設定物は譲渡され得ることが、これらの(質権、抵当権)契約の本質である。

1859

債権者は質権または抵当権設定物を自分のものにすることはできず、また、処分もできない。

1860

質権と抵当権は、債務が債務者または債権者の承継人間で分割されても、不可分である。

 よって、債務の一部分を弁済した債務者の相続人は、債務が完全に満足されない間は、質権または抵当権の割合的消滅を請求できない。

 また、債権の自己部分を受領した(債権者の)相続人は、満足されていないその他の相続人を害して、質物を返還し、また、抵当権を抹消できない。

 複数の物が抵当または質に供されており、各物が債権の特定部分のみを保証している場合は、これらの規定から除かれる。

 この場合、債務者は、各物が特に負担する債務の部分を弁済する都度、質権または抵当権を消滅させる権利を得る。

1861

質権または抵当権(設定)契約は、全種の債務を、これらが単純(puras)であっても、解除条件または停止条件に服していても、担保できる。

1862

担保設定物を、それを知って、更に質権または抵当権に供して、または、自己の物ではない物の所有者と称して他人を欺く者が陥る刑事責任は別として、質権または抵当権設定の約束は約定者間では債権的請求権のみを生じさせる。

(第2節:質権)

1863

1857条で要求される要件以外に、質権設定には、質物を債権者の、または、共通の合意で第三者の占有に置くことが必要である。

1864

商的流通にある物すべては、占有に置くことができると、質に供することができる。

1865

確定日付が公署証書で証されない場合は、質権は第三者に効果を生じない。

1866

質権契約は、債権者に自己の支配下または(引渡しがなされた)第三者の支配下に債権の弁済まで物を留置する権利を与える。

 債権者が質物を留置している間に債務者がその債権者と最初の債務の弁済前に他の(請求可能な)債務を契約した場合は、債権者は、その質権が二番目の債務の保証に服する約定がなくとも、両債権が満足されるまで留置を延長することができる。

1867

債権者は善良な家父の注意でもって質物を保管しなければならず、その保管費用の支払を(債務者から)受ける権利を得、本法の規定に従ってその喪失または毀損に責任を負う。

1868

質物が利息を生じる場合、債権者は受領利息を債権者への支払利息と相殺する。債権者への支払利息がない場合、または、(受領利息が)適法な支払利息を超過する間は、元本に充当する。

1869

質物が取上げられる場合に至らない間は、債務者はその所有者であり続ける。

 しかしながら、債権者は、第三者に対して質物を(返還)請求または保全するために、質物の所有者が有する請求(訴)権を行使することができる。

1870

債権者は、所有者の承認なくして質物を使用することはできない。また、使用した場合または質物を他の目的に濫用した場合は、所有者は質物の寄託を請求できる。

1871

債務者は、債務とその利息を、場合によっては費用と共に、弁済しない間は、債権者の意思に反して質物返還を請求することはできない。

1872

自己の債権が適時に満足されない債権者は、公証人の立会いにより質物の譲渡に着手することができる。この譲渡は、債務者と、場合によっては、質物の所有者を召喚して公売(subasta pública)でなされなければならない。最初の公売で譲渡されなかった場合は、同じ方式により2回目の公売を挙行することができる。これでも譲渡されない場合は、債権者は質物の所有者となることができる。この場合、自己の債権全部の受領書を交付しなければならない。

 質物が相場のある有価証券の場合は、商法の規定の方式で売却される。

1873

制度(instituto)または業として質物の上に貸付ける質屋および公的施設に関しては、それらに関連する法律および規則並びに補助的に本章の規定が適用される。

(第3節:抵当権)

1874

次の物のみ抵当権契約の目的とすることができる:

①不動産。

②不動産と同じ種類の財物上に課された、法律の規定に従って譲渡できる物権。

1875

1857条の要件以外に、抵当権が有効に成立するためには、設定(契約)文書を所有権登記簿に登記することが必要である。

 法律がその者の利益に抵当権を設定するところのその者は、抵当法が保険者の利益に保険料のため、また、国、県および市町村の利益に最終年の租税のために規定するものを除いて、その抵当権形成文書の作成と登記を要求する権利以外の権利は有しない。

1876

抵当権は、それを課される財物を、その所有者が何人であっても、被担保債務の履行に直接服させる。

1877

抵当権は、法律で規定された内容(? declaraciones)、拡張および制限と共に、抵当権設定者の支配下に不動産がある場合および第三者の手に移る場合で、次のものに及ぶ;性質上の従物、改良、未収取の果実、満期時に収受されていない収益、および、抵当物の保険者により、または、公用収用の効力で、所有者に譲許されたまたは支払うべき損害賠償の額。

1878

抵当権付き債権は、法律が規定する様式で、その全部または一部を第三者に譲渡することができる。

1879

債権者は、抵当物の第三占有者に、法律が規定する条件と様式で、その者が占有する財物で担保された債権の一部の弁済を請求することができる。

1880

抵当権の様式、範囲および効果は、その設定、修正および消滅並びに本節に規定されていないその他のものに関連する事項と同じく、現行の抵当法の規定に従う。

(第4節:収益質(anticresis))

1881

収益質により債権者は債務者の不動産の果実を収受する権利を取得する。その果実は、利息があれば、利息の弁済に充当する義務があり、その後、自己の債権の元本(capital)の弁済に充当される。

1882

債権者は、別段の特約がある場合を除いて、不動産に課される租税および負担を弁済する責任を負う。

 その保管と修理に必要な費用についても同様である。

 (債権者が)1段と2段の目的に使用する額は果実から控除される。

1883

債務者は、債権者に弁済すべき全額の弁済なしには、不動産の利用を再取得できない。

 しかし、債権者は、前条が課する義務を免れるために、別段の特約がある場合を除いて、債務者に再び不動産を利用するように要求することができる。

1884

債権者は、不動産の所有権を、約定期間内での債務の不払によっては、取得しない。

 反対の約定は全て無効である。但し、この場合、債権者は、民事訴訟法が規定する方式で、債務の支払または不動産の売却を請求できる。

1885

当事者は、債務の利息と収益質に供された不動産の果実との相殺を約定することができる。

1886

この契約には第1857条の最終段、第1866条の第2段、第1860条および第1861条が適用される。

 

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