(スペイン民法)                 元司法書士 古閑次郎

(平成27年3月見直し修正)

第4編 第6章:賃貸借契約

 

(第1節:総則)

1542

賃貸借(arrendamiento)は、物または工事もしくは役務について存し得る。

*注:工事・役務の賃貸借とは、我が国の請負・雇用契約類似である。)

1543

物の賃貸借では、当事者の一方は、他方にある物の享受または利用を特定の期間及び一定の対価でなさしめる義務を負う。

1544

工事または役務の賃貸借では、当事者の一方は一定の対価で或る工事を実施する、または、役務を他方に提供する義務を負う。

1545

利用することで消費される代替可能物(fungibles)は、この契約の目的とはなり得ない。

(第2節:農地と建物(fincas rústicas y urbanas)の賃貸借)

(第1款:総則)

1546

物の利用を許す、工事を実施する、または、役務を提供する義務を負う者を賃貸人と呼ぶ。物の利用、工事または役務の権利を取得し、支払い義務を負う者を賃借人と呼ぶ。

1547

口頭の賃貸借契約の履行が開始され、協定された対価の証拠がなかったときは、賃借人は賃借物を、(専門家が)定める対価を享受期間に応じて支払って、賃貸人に返還する。

1548

未成年者または無能力者の財物に関して、父母または後見人は、また、特別の授権がない財産管理人は、それらの物を6年を超える期間で賃貸借に付することはできない。

1549

第三者に関連しては、所有権登記簿に適法に登記されていない不動産賃貸借は効果を生じない。

1550

物の賃貸借契約で明示的に禁止されていないときは、賃借人は、賃貸人に対する契約の履行に責任があることは別として、賃借物の全部または一部を転貸借することができる。

1551

転貸人に対する義務は別として、転借人は、賃貸人と賃借人間で約定された方法で賃貸借物の利用と保全に係わる行為全てで賃貸人の利益のため責任を負う。

1552

転借人は、また、慣習に従って弁済した場合でないと、前払いした弁済はなされなかったとみなされて、転貸借で約定された(請求時に存する)対価の総額で賃貸人に対して責任を負う。

1553

売買契約の章に含まれる(瑕疵)担保責任についての規定は、賃貸借に適用される。

(第2款:賃貸人と賃借人の権利と義務)

1554

賃貸人は次の義務を負う:

①賃借人への契約目的物の引渡し。

②賃貸借の間、当初目的の利用ができる状態に賃貸借目的物を保全するために必要な修繕を行う。

③賃借人が契約の全期間中に賃貸借の平穏な享受ができるようにする。

1555

賃借人は次の義務を負う:

①約定条件で賃借料を支払う。

②賃貸借目的物を善良な家父の注意をもって約定された目的で利用する。約定がない場合は、その地方の慣習に従って目的物の性質から推測される利用に当てる。

③契約公正証書の費用の支払い。

1556

賃貸人または賃借人が前数条の義務を履行しない場合は、契約の解約および損害賠償を、または、契約を存続させて損害賠償のみを、請求することができる。

1557

賃貸人は、賃貸借物の形状を変更することはできない。

1558

賃貸借期間中に契約終了まで延期することができない緊急な修繕を賃貸借物に施す必要がある場合は、賃借人はその工事を、迷惑であっても、また、工事中不動産の一部を剥奪されるとしても、受忍する義務を負う。

 修繕が40日以上続く場合は、賃貸借料を期間と賃借人が剥奪される不動産の部分に比例して減少させなければならない。

 工事が、賃借人とその家族がその居住に必要とする部分を利用できなくするような性質である場合は、賃借人は契約を解約できる。

1559

賃借人は、他人が賃貸借物になした、または、公然と準備している権利侵害もしくは有害な事態を、可及的速やかに賃貸人に知らせる義務を負う。

 また、所有者に同様な緊急さで、第1554条の②に含まれる修繕の必要性を知らせる義務がある。

 これらの場合、賃借人は、その怠慢で所有者に生じる損害賠償の責任を負う。

1560

賃貸人は、賃貸借不動産の利用において第三者が引起した単なる事実上の妨害には責任を負わない

 第三者が、それが行政機関であろうと個人であろうと、自己に属する権利のために行為したときは、事実上の妨害ではない。

1561

賃借人は、賃貸借が終了した時は、不動産を、時の経過によりまたは不可抗力により滅失もしくは損傷した場合を除いて、受領した状態で返還しなければならない。

1562

賃貸借する時に不動産の状態の記載がないときは、法律は、賃借人が、反対の証明がある場合を除いて、良好な状態でそれを受領したと推定する。

1563

賃借人は、自己の過失なしに生じたと証明されないときは、賃貸借物に生じた毀損(deterioro)または喪失に責任を負う。

1564

賃借人は、自己の家族が引起した毀損に責任を負う。

1565

賃貸借が確定期間でなされた場合は、請求の必要はなく、その予め決められた日に終了する。

1566

契約が終了した時に、賃借人が賃貸人の同意を得て15日間賃貸借物を享受している場合、前もって請求がなされていなかったときは、第1577条と第1581条が規定する期間で黙示の更新があるものとみなす。

1567

黙示の更新の場合、主たる契約の保証のために第三者が取決めた債務は、その更新に関しては、止む。

1568

賃貸借物喪失の場合、または、当事者の一方が約定の履行をしない場合は、第1182条と第1183条、および、第1101条と第1124条の規定が、それぞれ、適用される。

1569

賃貸人は、次の事由のいずれかにより、賃借人に裁判上引渡し請求できる:

①約定期限の経過または賃貸借期間のために第1577条と1581条で定める期限の経過。

②約定対価での弁済の欠如。

③契約条項の違反。

④賃貸借物を約定されていない(賃貸借物を利用する資格がない)用途または役務に向けること。または、第1555条②で決められる利用に供されていないこと。

1570

前条で規定されている場合以外では、賃借人は第1577条と第1581条に規定される条項を享受する権利を有する。

1571

賃貸借不動産の買主は、反対の約定および抵当法の規定を除いて、売買実行時に有効な賃貸借を終了させる権利を得る。

 買主がこの権利を行使した場合は、賃借人は現農業年に対応する収穫の果実を採取させるように請求でき、また、その者に生じる損害を賠償するように売主に請求できる。

1572

買戻し約定を負う買主は、買戻し権の行使期限が終了するまでは、明け渡し権能を賃借人に行使することはできない。

1573

賃借人は、有益かつ任意の改良に関して、用益権者に付与されると同じ権利を得る。

1574

賃貸借の支払の場所と時期が約定されていない場合は、場所については第1171条が、時期についてはその地方の慣習に従う。

(第3款:農地の賃貸借のための特別規定)

1575

賃借人は、賃貸借土地の不毛による、または、通常の偶発的出来事に起因する果実の喪失による、地代減額の権利を有しない。但し、果実の1/2以上の喪失の場合、異常かつ予測できない偶発的出来事では、反対の特別約定を除いて、その権利を有する。

 当事者が合理的に予測できなかった、火災、戦争、疫病、大規模洪水、バッタ、地震または同様に滅多に起こらないものは、異常な偶発的出来事とみなす。

1576

また、賃借人は、果実が、その根または幹から分離後に喪失した場合も、地代減額の権利を有しない。

1577

農地の賃貸借は、その期間を定めていないときは、収穫に2年以上かかるとしても、賃貸借土地全体が1年間に与える、または、一度に与えることができる、果実の収穫のために必要な期間でなされたものとみなす。

 2つ以上の隔年耕作地に分割された農地の賃貸借は、それら耕作地の数と同じ年数とみなされる。

1578

賃貸借から去る賃借人は、(賃借に)入る者に、その土地の利用および次年の準備に必要なその他の手段を許可しなければならない。その代わりに、入る者は、その村の慣習に従って果実の収穫と享受に必要なものを、去る賃借人に許可する義務を負う。

1579

農耕用土地の農牧共同経営(aparcería)、飼育家畜または製造業の施設のための賃貸借には社団契約に関する規定、および、当事者の約定が、約定がない場合はその地方の慣習が、適用される。

(第4款:建物(predios urbanos)賃貸借の特別規定)

1580

特別の約定がない場合は、所有者の負担となるべき建物の修繕については、その地域の慣習が適用される。疑義がある場合は、所有者の負担とみなされる。

1581

賃貸借に期間が定められていない場合で、年の賃料(alquiler anual)が定められているときは、年により、月の賃料では月により、日の賃料では日により期間は定められているとみなされる。

 いずれの場合でも、特別な請求なしに、期限の到来で賃貸借は止む。

1582

ある家族の居住用の家屋またはその一部、店舗、倉庫または事業用施設の賃貸人が動産も賃貸するときは、動産の賃貸借は、賃貸借不動産の期間が続く間とみなされる。

(第3節:工事と役務の賃貸借)

(第1款:家事使用人(criados)および給与労働者の役務)

1583

この種類の役務を、確定期限なしに、一定の期間で、または、ある特定の仕事のために、契約することができる。生涯に亘りなされた賃貸借は無効である。

1584

確定期間で主人(amo)またはその家族の人的役務に向けられた家事使用人は、その期限が到来する前に辞めることができ、また、解雇することもできる。但し、主人が家事使用人を正当事由なしに解雇する場合は、当然受領すべき賃金と更に15日分を支払って、補償しなければならない。

 主人は、反対の証明がない場合は、次のことに確信を有する(? ser creído)

①家事使用人の賃金の額。

②当年において発生する賃金の支払い。

1585

前数条の規定の他に、主人と使用人については特別法と特別規則が規定する事項が適用される。

1586

一定期間で一定業務を行う農事使用人、職人、職工およびその他の給与労働者は、正当事由がないと、契約の履行前は、辞任も解雇もすることもできない。

1587

前数条に係る使用人、職人、職工およびその他の給与労働者の解雇(辞任)は、その業務で占有していた道具および建物をそれらの者から剥奪する権利を付与する。

(第2款:清算額(por ajuste)または請負額による(por alzado)工事)

1588

工事を実施する者が単にその労務もしくは技能(industria)を投入するか、または、材料も提供するか約定して、ある工事の実施を契約することができる。

1589

工事の契約をした者が材料を投入する義務があった場合は、その者は、工事の引渡しの前にそれが壊れた場合の損失を、受領遅延があった場合を除き、引受けなければならない。

1590

労務または技能のみを投入する義務を負う者は、工事の引渡し前に壊れた場合、受領遅滞がないと、または、材料の低品質で破壊が生じたとき適宜注文者にその事情を警告していないと、賃金を請求できない。

1591

建築の瑕疵で壊れた建物の請負人(contratista)は、建築完了から数えて10年以内にその損壊が生じた場合は、損害賠償の責任を負う。監督した建築家も、損壊が土地または監督の瑕疵に起因すべき場合は、同じ期間同様な責任を負う。

 契約条件を請負人が履行しなかったことが原因の場合は、補償請求権は15年存続する。

1592

工事を個数または量目でなす義務を負う者は、注文主に個々に受領し、比例して支払うように請求できる。

 引渡された(satisfecha)部分は承認され、受領されたものと推定される。

1593

土地所有者との間で合意した計画に基づいて、建物の建築または他の工事を一括清算(ajuste alzado)で請負う建築家もしくは請負人は、日給または材料の価額が増加したとしても、請負代金の増加を請求できない。しかし、工事の増加を引起す計画変更がなされたときは、所有者の承認を条件として、増加請求できる。

1594

注文主は、自己のみの意思により、請負工事を、たとえ開始していても、全費用、労務および得ることができた利益を補償して、取止めることができる。

1595

工事をある者にその人的資格により請負わせていた場合は、契約はその者の死亡で取消される。

 この場合、注文主は請負業者の相続人に、終了した工事の部分の代金と準備した材料の代金を、これらの材料である程度の利益がもたらされると、約定代金に比例して支払わなければならない。

 請負人が自己の意思と関係ない事由で工事を完了できない場合も、同様である。

1596

請負人は、工事で雇っている者たちが実施した労務に責任を負う。

1597

請負人が一括的清算払いで契約した工事に労務と材料を投入する者たちは、注文主が請求時に請負人に負う金額の範囲で、注文主に対して請求権を持つ。

1598

工事が注文主の満足を条件として約定されたときは、意見の一致がない場合は、(満足の)承認は対応する専門家の判断に留保されたものと解される。

 工事(の出来)を承認すべき者が第三者の場合は、その者が決することに従う。

1599

別段の約定または慣習がない場合は、工事代金は引渡し時に支払われなければならない。

1600

動産に仕事をなした者は、支払いまで質物としてそれを留置する権利を持つ。

(第3款:人と物の水上・陸上運輸)

1601

陸上または海上での商品運送人は、それらに託された物の看視と保全について、旅館主(posaderos)に関して第1783条と第1784条が規定するのと同じ責任に服する。

 本条の規定は、海上・陸上運送に関しての商法の規定を害しないものと解される。

1602

運送人は、受領物の喪失および損害に、喪失もしくは損害が偶然または不可抗力に起因すると証明されないときは、同様に責任を負う。

1603

これら数条の規定は、特別法および特別規則の規定を害しないものと解される。

 

上位ページへ戻る。