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(スペイン民法)                   元司法書士 古閑次郎

(平成27年3月見直し修正)

序章:法規範、その適用と効果。

(第1節:法源)

1

1. スペイン法体系(ordenamiento jurídico)の源は、法律、慣習および法の一般原則である。

2. 上位の他の条項に矛盾する条項は効力がない。

3. 慣習は、倫理または公序に反しなく、かつ、証明された場合には、適用すべき法律がないときのみ有効である。

  ある意思表示を単に解釈するだけのものでない法的慣行(usos jurídicos)は慣習とみなされる。

4. 法の一般原則は、法体系を形成する(informador)その性格は別として、法律または慣習がない場合に適用される。

5. 国際条約に含まれる法規範は、官報に全部掲示されて国内法の一部を構成するに至らない間はスペインには直接適用されない。

6. 判例は、最高裁判所が法律、慣習および法の一般原則を解釈し適用するときに繰り返し設定する理論を伴って法体系を補足する。

7. 裁判官および裁判所は、確立された法源体系に留意して、審理する事件を解決する不可避的義務を負う。

2

1. 法律は、それに別に規定していないときは、官報掲載から20日で効力を有する。

2. 法律は、他の後の法律によってのみ廃止される。廃止は、明示的に規定される(有効)範囲を有し、また、新法において同一の事項について前法と両立しない全ての範囲に及ぶ。ある法律の単純な廃止により、その法律が廃止した法律を復活させることはない。

3. 法律は、反対の規定がないときは、遡及しない。

(第2節:法規定の適用)

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1. 法規定は、その語の本来の意味に従い、文脈、歴史的・立法的な先例規定および(規定が)適用されるべき時代の社会的実状に関連して、基本的に当該規定の精神と目的に配慮しながら、解釈される。

2.例え、裁判所の決定は排他的に衡平にのみ依拠できる(descansar en)ものと法律が明示的に認容していても、法規定の適用においては衡平は慎重に考慮されなければならない。

4

1. 規定の類推適用は、その規定が特定の場合への適用を考慮していなくて、理由の同一性が互いに認められる他の類似の場合を規律するときは、適当である。

2. 刑法、例外法および時限法は、それらに明示的に規定されている場合および時に異なる場合および時においては適用されない。

3. 本法典の規定は、他の法律によって規律される事項においては補完的規定として適用される。

5

1. 他に規定されていない場合、日によって示される期間では、特定の日から数えるときは、その日は計算から除かれ、翌日から開始される。期間が月または年で数えられる場合は、日付から日付で数えられる。満期となる月で計算の初日に対応する日がない場合は、期間はその月の末日で満了すると解する。

2. 期間の民事的計算では休日は排除されない。

(第3節:法規定の一般的効果)

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1. 法律の無知はその履行を免除しない。

  法の錯誤(誤謬)は法律が規定する効果のみを生じさせる。

2. 準拠法の任意的排除およびその法律で認められている権利の放棄は、公益または公序に反しなく、かつ、第三者を害しないときのみ、有効である。

3. 強制的および禁止的規定に反する行為は、それらの規定に異なる効果が(その違背行為について)設定されている場合を除いて、完全に無効である。

4. 法令により禁止されている結果または反する結果を求める行為は、ある規定の条文の庇護の下でなされたとしても、法律をかいくぐってなされたものとみなされ、また、回避しようとした規定の正当な適用を害しない。

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1. 権利は、誠実に行使されなければならない。

2. 法律は、権利の濫用または権利の反社会的行使を庇護しない。行為者の意思、その目的または実現される状況により明示的に権利行使の通常限度を超える全ての行為または不作為は、第三者を害すると、相応な(損害)賠償を生じさせ、また、濫用が継続しないようにする司法的もしくは行政的措置の採用を生じさせる。

(第4節:国際私法の規定)

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1. 刑法、警察法および公安法は、スペイン領内に居る全ての者に適用される。

2. (2000年民亊訴訟法により)削除

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1. 自然人に対応する属人法はその国籍により決定される。当該法は、権利能力、身分、家族の権利・義務および死亡による相続に適用される。

  属人法の変更は、前の属人法に従って獲得した成年(該当性)には影響しない。

2.婚姻の効果は、婚姻約定時の夫婦の共通属人法で規律される。この法がない場合は、婚姻挙行前に作成された公署証書で夫婦が選択した夫婦の一方の属人法または常居所地法により規律される。この選択がない場合は、挙行直後の共通常居所地法による。この常居所地がない場合は、婚姻挙行地法による。

婚姻の無効、別居および離婚は本法第107条が決める法律によって規律される。

3. 夫婦財産制を設定、変更または取り替える約定もしくは契約は、それらが婚姻の効果を規律する法または作成時の当事者一方の国籍の法もしくは常居所地の法に従っているときは、有効である。

4. 養親子と父子関係を含む親子関係の性質および内容は、子の属人法により規律される。これが決定できない場合は、子の常居所地法が適用される。

5. 国際養子縁組は、国際養子縁組法の規定により規律される。同様に、外国当局により形成された養子縁組は、当該国際養子縁組法の規定に従ってスペインで効力を有する。

 20071228日法律54号国際養子縁組法により改定。同年同月30日発効)

6. 後見(制度)およびその他の無能力者保護の制度は本人の国籍の法により規律される。しかし、暫定的または緊急な保護措置はその常居所地法による。

スペインの司法または行政当局が介入する後見(制度)およびその他の保護制度の設定手続は、全ての場合、スペイン法に従って審理される。

スペイン領内にいる遺棄された年少者または無能力者についての保護的・教育的措置の採用はスペイン法に準拠する。

7. 親族間の扶養給付への権利は、扶養者と被扶養者の共通本国法により規律されなければならない。しかしながら、扶養請求者が共通本国法に従っては扶養を受けられないときは、その者の常居所地法が適用される。両方の法がないとき、または、どちらも扶養請求を認めないときは、請求を審理する当局の国内法が適用される。共通国籍が変わった場合または被扶養者の常居所地が変わった場合は、変更の時から新法が適用される。

8. 死因承継(相続)は、財産の性質およびそれらが存する国のいかんに係わらず、被相続人の死亡時の本国法により規律される。しかしながら、遺言者の(その作成時の本国法に従って遺言中になされた)処分および処分者の(その作成時の本国法に従って調製された)相続契約は、相続を規律する法が別であっても、その有効性を保持する。たとえ、遺留分が場合によってこの(相続を規律する)法に適合するとしても。法律上当然に生存配偶者に与えられる権利は、卑属の遺留分を除いて、婚姻の効果を規律するのと同じ法により規律される。

9. 本節につき、2重国籍のスペイン法に予定されている(previsto)状況については国際条約が決定するところに従う。なにも決定されていない場合は、最後の常居所地と一致する国籍が優先され、それがないときは、最後に取得した国籍が優先する。

 とどのつまり、スペイン法または国際条約で予定されていないその他の国籍をも有している者は、スペイン国籍が優先する。2以上の国籍を有しており、かつ、いずれもスペイン国籍でない場合は、次項に規定するところによる。

10. その常居所地の法を無国籍の者または国籍が不明な者の属人法とみなす。

11. 法人に対応する属人法はその国籍によって決定される法であり、権利能力、設立、代理、活動、組織変更、解散と消滅に関する事項を規律する。

 異なる国籍の会社の合併では各々の属人法を考慮する。

10

1. 不動産上の占有権、所有権およびその他の権利並びにそれらの公示は、その不動産が存する場所の法で規律される。

同じ法が動産にも適用される。

移動中の物の上の権利の設定または譲渡については、それはその発送地にあるものとみなされる。但し、発送人と荷受人が、明示的もしくは黙示的に、当着地にあるものとみなすと約定した場合は除かれる。

2. 船舶、航空機および鉄道輸送手段並びにそれらの上に設定される全ての権利は、その船舶登記、登録または登記地の法に従う。自動車および道路上の輸送手段はそれが存する地の法に従う。

3. 有価証券の発行は、それを発生させる地の法に従う。

4. 知的および工業所有権は、スペインが当事者である国際協約および条約による規定は別として、スペイン法に従ってスペイン領内で保護される。

5. 契約上の債権債務には、当事者が明示的に依拠した法が、(その法が)その取引に関係する場合、適用される。それがない場合は、当事者の共通国内法が適用され、それもない場合は、共通常居所地法が適用され、最後には、契約締結地の法が適用される。

前節の規定にかかわらず、明示の依拠がない場合は、不動産の存する地の法が不動産に関する契約に適用される。また、動産の存する地の法が、商業施設でなされる有体動産の売買に適用される。

6. 労働契約に起因する債権債務には、当事者の明示の依拠がない場合、第81号の規定は別として、(労働)サービス提供地の法が適用される。

7. 贈与には、すべての場合、贈与者の本国法が適用される。

8.本国法によると無能力者である外国人がスペインで締結した有償契約は、無能力の理由がスペイン法制で認められていないときは、スペイン法体系について、有効である。この規則は、外国にある不動産に関する契約には適用しない。

9. 非契約的債権債務は、それらが生じる事実(行為)の発生地の法により規律される。

  事務管理は、管理者がその主たる活動をなす地の法により規律される。

不当利得では、不当利得者の利益のために財産価値を移転させた法が適用される。

10. ある債権債務を規定する法は、その履行要件、不履行の結果およびその消滅に及ぶ。しかしながら、司法的または行政的介入を必要とする(強制)執行方式には履行地の法が適用される。

11. 法定代理には、代理人の権能を生じさせる法的関係を規定する法が適用され、任意代理には、明示的依拠が介在しないと、授与された権能が実行される国の法が適用される。

11

1. 契約、遺言およびその他の法律行為の形式(forma)および手続(solemnidad)は、それらが作成される国の法により規律される。しかしながら、その内容に適用される法が要求する形式および手続で締結されたものも、また同じく、処分者の属人法または締結者の共通本国法に従って締結されたものも有効である。同様に、不動産が所在する地の形式および手続に従ってその不動産に関してなされた法律行為および契約は有効である。

  これらの法律行為が船舶または航空機内でその航行中なされた場合は、その船舶登録、登録または登記がある国でなされたものとみなす。軍の艦船および航空機はそれらが属する国の領域の一部とみなす。

2. 法律行為および契約の内容を規定する法が、その有効性のために、ある一定の形式または手続を要求するときは、外国でそれらがなされる場合を含み、常にその法が適用される。

3. 外国でスペインの外交官または領事により認証される契約、遺言およびその他の法律行為にはスペイン法が適用される。

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1. 準拠すべき抵触規定(norma de conflicto)を決定するための(法律関係の)性質決定は、常にスペイン法に従ってなされる。

2. 外国法への移送(反致)は、その(外国法の)抵触規定がスペイン法ではない別の法に移送(反致)できることを考慮することなく、その(外国法の)実質法になされたものとみなす。

3. 公序に反する結果となるときは、いかなる場合でも外国法は適用されない。

4. スペインの強行法を回避する目的で抵触規定を利用することは法律詐欺とみなす。

5. ある抵触規定が、異なる法体系が共存する国の法制に移送するときは、どれを準拠法と定めるかは当該国の法制に従ってなされる。

6. 裁判所および当局は、職権でスペイン法の抵触規定を適用する。

(第5節:国内において共存する民事法制の適用範囲)

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1. 法律と一般的規則の適用効果を決定する、本章の規定および(夫婦財産制に関する規定を除く)第1編第4章の規定は、スペイン全土で一般的かつ直接に適用される。

2. その他の事項では、また、地方もしくは地域において有効な特別法もしくは地域法を充分尊重して、それらの各地方または地域において有効な法がない場合、それらの地方・地域の特別規定に従って本民法典は補充法として通用する。

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1.  共通民法、特別民法または地域民法のどれに従うかは民事州籍(vecindad civil))で決定される。

*注:州籍とはどの自治州に属するかのつながり)

2. 共通民法の地域内に州籍を有する父母の子はその民法の地域内に州籍を有し、特別もしくは地域民法内に州籍を有する父母の子はその民法の地域内に州籍を有する。

  未成年解放されていない養子は、養子縁組によって養親の州籍を獲得する。

3. 子が出生したとき、または、養子縁組がなされたとき、父母が異なる州籍を有している場合は、子は、以前に親子関係を決定した(一方の親に対応する)州籍を取得する。それがない場合は、出生地の州籍を取得する、そして、最後には共通民法の州籍を取得する。

  しかしながら、父母または親権を行使する者もしくは親権が付与された者は、出生または養子縁組から6カ月経たない間に、それらの者の内のいずれかの州籍を付与できる。

  親権の剥奪もしくは中断または父母の州籍の変更は、子の州籍に影響しない。

  全ての場合、子は、14歳になったときから親権解放後1年経過する前までに、出生地の州籍か父母の一方の州籍を選択できる。親権解放されていないときは、選択には法定代理人の援助が必要である。

 4. 婚姻によって州籍は変更しない。しかし、法定または事実上の別居をしていない夫婦の一方は、他方の州籍をいつでも選択できる。

 5. 州籍は(次の場合)取得される:

2年間の継続居住、当事者が自己意思であると表明する場合。

 ② 10年間の継続居住、その間に反対の宣言をしないとき。

 両方の宣言は身分登記簿に証せられ、また、繰り返す必要はない。

 6. 疑いがある場合は、出生地に対応する州籍が優先する。

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1. スペイン国籍を獲得する外国人は、国籍取得の登録をするとき、次の州籍のいずれかを選択しなければならない:

 ① 住所地に対応する州籍。

 ② 出生地に対応する州籍。

 ③ 父母のいずれかまたは養親のいずれかの最後の州籍。

 ④ 配偶者の州籍。

 この選択の宣言は、国籍取得の当事者の(権利)能力に留意して、自身により、もしくは、その法定代理人の援助を受けて選択者自身により、または、法定代理人により手続される。国籍取得が法定代理人の宣言または申請でなされるときは、その必要な認証(手続)が選択されるべき州籍を決定しなければならない。

2. 帰化許可書で国籍取得する外国人は、前項の規定または申請人が有する他の事情に従って、その者の選択を考慮して、(帰化)譲許の政令が決める州籍を獲得する。

3. スペイン国籍の回復は、同時に国籍喪失時に当事者が有していた州籍の回復をもたらす。

4. 独自のもしくは異なる民事的特殊性を持つある地区または場所についての人的従属(関係)は、その対応する地域の特別もしくは地域法制の中で、本条および前条の規定により規律される。

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1. 国内に異なる民事法制が共存することで生じる可能性のある法の抵触は、次の事項を考慮して、第4節の規定で解決される:

 ① 民事州籍により決定される法が属人法である。

 ② 第12条の1,2,3項の規定は(法律関係の)性質決定、移送(反致)と公序には適用できない。

2. アラゴン州の地域法集に規定される寡婦扶助料の権利は、例えその後で州籍を変更しても、この場合相続法が規定する遺留分を除いて、当該法集の夫婦財産制に服する夫婦に属する。

  寡婦扶助料の期待権(derecho expectante de viudedad)は、その権利が認められている地域に存しない財物の善意・有償名義での取得者に、その契約が当該地域外でなされ、譲渡者の夫婦財産制が証されていない場合、対抗できない。

  寡夫(婦)の用益権は、死亡者が死亡時にアラゴン州籍を有していた場合、生存配偶者に属する。

3. スペイン人同士の婚姻の効果は第9条の基準に従って適用されることとなるスペインの法律により規律され、それがない場合は、本民法典によって規律される。

  後者の場合、約定者の互いの属人法に従って別産制を適用しなければならないときは、本民法典の財物の別産制が適用される。