2章 犯罪の刑事責任を負う人

27
 正犯(autor)と共犯(cómplice)は、犯罪の刑事責任を負う。

28
 正犯は、自分自身で、共同で、または、彼らが道具として利用する他人を介して、その行為を実行する者である。
 また、次の者は正犯と見なされる:
a) 他人にそれを実行させるべく直接的に教唆する者。
b) (その行為が)ないと(犯罪)実行されなかったであろう行為でもって、その実行に協力する者。

29
 共犯とは、前条に含まれない者で、先行する行為、または、同時の行為でもって犯行に加担する者である。

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1. 機械的流布(difusion)手段または媒体を使用して実行される犯罪では、共犯も、人的にまたは実際にその共犯を支援した者も刑事責任を負わない。
2. 第28条が言及する正犯は、次の順序に従い、段階的、排他的かつ補充的に刑事責任を負う:
① 実際に文章を書いた、または、問題の表示(signo)を作成した者、また、そうするように教唆した者。
② 流布に係わる出版または番組のディレクター。
③ 出版社、送信社または放送事業者の取締役。
④ 録音録画会社、再生機会社または印刷会社の取締役。
3. 不出頭の宣言(declaración de rebeldía)とスペイン国外における居住を含んで、刑事責任の消滅以外の理由により前項の号のなんらかに含まれる者のいずれにも責任追及することができないときは、その号の直後の号に記載されている者に(訴訟)手続きは向けられる。

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 ある法人の事実的または法定管理者として、あるいは、他人の名で、または、他人の法定または任意代理で行為する者は、犯罪の積極的当事者となり得るためにその犯罪の対応類型が要求する条件、資格または関連性がその者に満たされていなくとも、それらの事由が(その名でまたはその代理で行為するところの)団体または人に満たされる場合は、個人的に刑事責任を負う。

31条の2
1. 本刑法典で規定される場合では、法人は次の犯罪の刑事責任を負う:
a)  法人の名またはその計算・費用で、その直接または間接的利益に、その法定代理人により、あるいは、個人的または法人のある機関の構成員として行為する者で、法人の名で意思決定することを認められた、または、法人内部の組織・支配の権能を誇示する者によって、実行された犯罪。 
b)  法人活動の行使において、その計算・費用で、かつ、その直接または間接的利益に、事案の具体的事由を勘案して、a)号に規定する自然人の支配に服する者で、その法人活動の監視・警戒・統制の義務の重大な不履行で、(犯罪)行為を実行できていた者によって犯された犯罪。
2. 前項のa)号に規定する者による犯罪の場合、法人は次の条件を満たすときは、責任を免れる:
① (法人の)管理機関が、犯罪実行の前に、同様な犯罪を予防するための、または、その実行危険を有意義に減少させるための適切な監視・統制方策を含む組織化・管理の基準(modelos)を効果的に採用し、実行していること。
② 採用された予防基準の機能・履行の監視が、発議・統制の独立権能を有する(法人の)ある機関に、または、法人の内部統制の効果を監視する機能が合法的に委託されたある機関に委任されていること。
③ 個人の正犯が、組織化・予防の基準を詐欺的に回避して犯罪を実行したこと。
④ 条件②に係わる機関による監視・警戒・統制機能の懈怠または不十分な行使に陥っていないこと。
 以上の条件が部分的に証明される場合は、この事由は刑の軽減効果で評価される。
3. 小規模法人の場合、第2項の②の条件に係る監視機能は、管理機関が直接担うことができる。この規定について、準拠法に従って簡略損益計算書の提出が認められる法人は、小規模法人である。
4. 第1b)号に規定される者が犯罪実行する場合は、法人は、犯されたと同様な犯罪を予防するための、または、その実行危険を有意義に減少させるための適切な組織化・管理の基準を、犯罪実行前に、効果的に採用・実施したときは、責任を免れる。
 この場合、本条2項第2段に規定する軽減が適用される。
5. 第2項①号および前項に係る条件に係る組織化・管理の基準は次の要件を満たさなければならない:
① (その範囲内で)予防されるべき犯罪が実行されるであろうところの活動を特定すること。
② 法人の意思形成、意思決定採用および規準に関連する意思決定実施のプロセスを具体化するプロトコルまたは手続きを設定すること。
③ 予防すべき犯罪の実行を妨げるに適切な資金の管理基準を用意すること。
④ 予防基準の働き・遵守の監視を委託された機関に起こりうる危険・不作為を通知する義務を科すこと。
⑤ 当該基準が設定する方策の不作為を適切に罰する懲戒システムを設定すること。
⑥ 当該基準の定期的監査およびその臨時修正を、その規定の重要な違反が明らかになったとき、または、組織の改変、統制構造の改変または事業の改変が発生するとき、実行すること。

31条の3
1. 法人の刑事責任は、前条に規定される職務または機能を誇示する者によって犯されるべきであった或る犯罪の実行が証明されると、たとえ、責任ある具体的自然人が個別化されていなくとも、あるいは、その者に対して訴訟提起できなくとも、追求可能である。同じの(犯罪)行為の結果、両者に罰金刑が科されるときは、裁判官または裁判所はそれぞれの額を、合計がそれら行為の重大性と比べて不釣合いにならないよう、修正する。
2. 実際に(犯罪)行為を実行した者に、または、適切な統制を施さなかったことで犯行を可能とした者に、被告人の有責性に影響する、または、その責任を加重する事由の併発、あるいは、当人が死亡した、または、裁判を免れたという事実は、法人の刑事責任を排斥または修正しない。ただし、次条の規定を害しない。

31条の4
 犯行後その法定代理人によってなされた次の行為は、法人の刑事責任の軽減事由と見なされる:
a) 司法手続きが当該法人に提起されることを知る前に、違反を官署に告白するに至った。
b) (訴訟)手続きのいかなる時点においても、行為に起因する刑事責任を明らかにするため、新たなかつ決定的証拠を持ち寄って事件の捜査に協力した。
c) (訴訟)手続きのいかなる時点において、かつ、口頭弁論の前に、犯罪に起因する損害を回復または減少させるに至った。
d) 口頭弁論開始の前に、法人の手段でもってまたはその範疇で将来起こり得る犯罪を、予防・発見する効果的方策を設定した。

31条の5
1. 法人の刑事責任に係る規定は、国、属地的・制度的行政機関、調整機関(Organismos Reguladores)、企業的公共機関、公権の国際機関、または、主権の公権限または行政権限を行使するその他の機関には適用されない。
2. 公共政策を実施する、または、全体の経済利益の役務を提供する公的商事会社(sociedad mercantile pública)の場合、第33条第7項のa)号とg)号に規定する刑罰のみを科すことができる。この制限は、裁判官または裁判所が、その発起人、創業者、取締役または代表者により偶発的(eventual)刑事責任を回避する目的で、創設された法人(forma jurídical)であると認定する場合は、適用されない。

 

通訳案内士(元司法書士) 古閑次郎

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スペイン刑法典(2015年版)