(第3章 刑罰)
2節 刑の適用

1款 刑の適用の一般規則

61
 法律が刑罰を設定すると、(法律が)既遂違反の行為者(autor)にそれを科すと解される。

62
 犯罪の(着手)未遂の行為者には、(犯罪)意図に固有の危険性および(犯罪)遂行の達成程度を考慮して、適切と考えられる範囲で、既遂犯罪に法律が規定する刑より12段階低い刑が科される。

63
 既遂犯罪または未遂犯罪の共犯(cómplice)には、当該犯罪の本犯に法律が規定した刑より1段階低い刑が科される。

64
 上記の各規則は、未遂と共犯が法律で格別に(especialmente)罰せられる場合には、適用されない。

65
1. 人的性質の原因(causa)に基づく(刑の)加重または軽減事由は、それらを有する者のみの責任を加重または軽減する。
2. (犯罪)行為の実質的実行、または、その実行に使用される手段に基づく加重または軽減事由は、犯行時または協力の時点で、それら事由を知っている者の責任を加重または軽減するためにのみ寄与する。
3. 教唆者または必要的協力者に主犯の有責性の基礎となる条件、資格または人的関係がないときは、裁判官または裁判所は当該違反に法律が規定する刑より1段階低い刑を科すことができる。

66
1. 故意犯罪に係わる刑罰の適用には、裁判官または裁判所は、軽減事由または加重事由の有無に従って次の規則を遵守する;
① 1個の軽減事由のみがあるときは、当該犯罪に法律が定める刑の上限が半分下回る刑(pena en la mitad inferior)を適用する。
(訳者注:上限が半分下回る刑とは、法定刑の上限を、その上限と下限の差分の半分だけ減じて算出されるものである。例えば、法定刑が、6年から10年の禁固刑とすると、10-6=4÷2=2年分だけ上限を減じて、適用される刑は、6年から8年となる。)
② 2個以上の軽減事由、または、1個以上の顕著に優れた(cualificado)軽減事由があり、加重事由がないときは、当該軽減事由の数と重要性(entidad)に留意して、法律で定める刑より1~2段階低い刑を適用する。

③ 1個のみまたは2個の加重事由があるときは、当該犯罪に法律が定める刑の下限の半分上回る刑を適用する。
(訳者注:下限が半分上回る刑とは、法定刑の下限を、その上限と下限の差分の半分だけ増して算出されるものである。例えば、法定刑が、6年から10年の禁固刑とすると、10-6=4÷2=2年分だけ下限を増して、適用される刑は、8年から10年となる。)
④ 3個以上の加重事由があり、軽減事由がないときは、法律で定める刑より1段階高い刑を適用できる。

⑤ 被告人が犯行時本刑法典の同一の章に含まれる少なくとも3犯罪(同様な性質を有するものに限る)により刑が執行されたとの評価を持った累犯の加重事由があるときは、先の刑、新たに犯した犯罪の重大性を考慮して、当該犯罪に法律で定める刑より1段階高い刑を適用する。
 本規則の効果のため、取消された先の犯罪または取消されるべき先の犯罪は考慮されない。
⑥ 軽減事由も加重事由もないときは、被告人の人的事由および犯行の重要性の大小に留意して適当と思料される範囲で、犯された犯罪に法律が定める刑を適用する。
⑦ 軽減事由と加重事由があるときは、刑の個別化(individualización de la pena)のためそれらを合理的に評価し相殺する。(結局)軽減と評定される根拠が保持される場合は、1段階低い刑を適用する。加重と評定される根拠が保持されると、下限が半分上回る刑が適用される。
⑧ 裁判官または裁判所が2段階以上低い刑を適用するときは、その全範囲でそうできる(?)。
2. 軽罪および過失犯罪では、裁判官または裁判所は、その慎重な判断で前項の規定に縛られることなく、刑を適用する。 

66条の2
 法人に科する刑罰の適用においては、第66条第1項①~④および⑥~⑧の規定と次の規定による:
① 刑が第2編の規定によって制定されているケースでは、第33条第7項のb)~g)に規定する刑の賦課と範囲について決定するためには、次のことを考慮しなければならない;
a) 犯罪活動またはその効果の継続性を回避するためのその(賦課・範囲の)必要性。
b) その経済的・社会的結果、特に労働者への効果。 
c) 統制義務を果たさなかった自然人または機関が、法人の構造中に占める地位。
② 第33条第7項のc)~g)に規定される刑が限定期間で科されるときは、その期間は、自然人が当該犯罪を犯した場合に規定される自由剥奪刑の最大期間を超えることはできない。
 c)~g)に規定される制裁を2年超の期間で科するためには、次の事由のいずれかがあることが必要である;
a) 法人が累犯者である。
b) 法人が道具として犯行に利用される。法人の合法的活動が、その違法活動より顕著でない場合、この最後のケースに該当するとみなされる。
 第31条の21項のb)に規定されるケースでは、法人の責任が、監督、監視および重要でない統制の(各)義務不履行に起因するときは、これらの刑の期間は、いずれにせよ、最大2年とする。
 第33条第7項のb)とe)に規定する制裁の永久的賦課について、また、同条同項e)とf)に規定する制裁の5年超の期間での賦課については、次の事由のいずれかがあることが必要である;
a) 第66条第1項の⑤に規定する事実の場合に当たる。 
b) 法人が道具として犯行に利用される。法人の合法的活動が、その違法活動より顕著でない場合、この最後のケースに該当するとみなされる。

67
 前条の規定は、(刑事)違反を規定または処罰(describir o sancionar)する際に法律が考慮した加重または軽減事由には適用されない。また、それら(事由)がない場合に実行することができない犯罪に固有な(それらの)事由にも適用されない。

68
 21条①号の(軽減)事由に規定されるケースでは、裁判官または裁判所は、欠ける、または、併置する要件の数および重要性および被告人の人的事由に留意して、法律が定める刑より1または2段階低い刑罰を科す。ただし、本刑法典の第66条の適用を害しない。

69
 犯罪行為を行う18歳以上21歳未満の者には、未成年者の刑事責任を規定する法律の規定を、当該法律が規定するケースおよび要件で、適用することができる。

70
1. なんらかの犯罪に法律が規定している刑より1段階高いまたは低い刑は、次の規則の適用結果として生じる範囲(extension)を有する:
① 1段階高い刑は、当該犯罪に法律が規定する最大の数字から出発して、それにその半分の量を増加させ、合計結果を上限として形成される。1段階高い刑の下限は、当該犯罪に法律が規定する刑の最大値に、科する刑の性質に応じて、1日または1罰金日を増加したものとなる。
(訳者注:例えば、法定刑が6年から10年の禁固刑の場合、上限(10年)の半分5年を上限に加えて、新たな上限(15年)とする。新たな下限は、元の10年に1日を加えたもの(10年1日)となる。つまり、10年1日から15年となる。)
② 1段階低い刑は、当該犯罪に法律が規定する最小の数字から出発して、それからその半分の量を控除し、控除結果を下限として形成される。1段階低い刑の上限は、当該犯罪に法律が規定する刑の最小値に、科する刑の性質に応じて、1日または1罰金日を減じたものとなる。

(訳者注:例えば、法定刑が6年から10年の禁固刑の場合、下限(6年)の半分3年を下限から減じて、新たな下限(3年)とする。新たな上限は、元の下限(6年)から1日を減じたもの(6年-1日)となる。つまり、3年から6年-1日となる。)
2.
 刑の下限が半分上回る()または上限が下回る()を決定するため、または、段階の低いまたは高い刑を特定するため、場合に応じて、日または罰金日は不可分とみなされ、加減の刑罰単位(unidad penológicas de más o menos)として機能する。

3. 本条第1項①号の規則の適用において、1段階高い刑が、本刑法典で各刑に定められる上限を超えるときは、次のものが段階直上刑(pena inmediatamente superior en grado)となる:
① 決定された刑が禁固刑の場合、刑の最大期間が30年の条項を有する(禁固の)刑。
② 絶対的または個別的公権剥奪刑の場合、刑の最大期間が30年の条項を有する(公権剥奪の)刑。
③ 公雇用または公職停止の刑罰の場合、刑の最大期間が8年の条項を有する(停止の)刑。
④ 自動車とモータバイクを運転する権利の剥奪の場合、刑の最大期間が15年の条項を有する(権利剥奪の)刑。
⑤ 武器の所有・携帯する権利の剥奪の場合、刑の最大期間が20年の条項を有する(権利剥奪の)刑。
⑥ 或る特定の場所での居住またはそこへの出入りする権利の剥奪の場合、刑の最大期間が20年の条項を有する(権利剥奪の)刑。
⑦ 被害者、その家族または裁判官または裁判所が決めるその他の者への接近の禁止については、刑の最大期間が20年の条項を有する(接近禁止の)刑。
⑧ 被害者、その家族または裁判官または裁判所が決めるその他の者への連絡の禁止については、刑の最大期間が20年の条項を有する(連絡禁止の)刑。
⑨ 罰金刑の場合、刑の最大期間が30月の条項を有する(罰金の)刑。
4. 終身刑より1段階低い刑は、20年から30年の禁固刑である。

71
1. 1段階低い刑を決める場合、裁判官または裁判所は、刑の種類ごとに法律で示されている最小の量によって制限されるものではなく、対応する規則の適用に起因する方式でそれらを減らすことができる。
2. しかし、上記の規則を適用することにより、3月未満の禁固刑を科すのが適切である場合、その刑は、いずれにしても、罰金刑、共同体の利益での労働刑または常時所在確認刑で、法律が当該犯罪にこれらの刑を規定していなくとも、代替される。この場合、禁固の1日は罰金の2割合日(cuota)、1日の労働または1日の常時所在確認で代替される。

72
 裁判官または裁判所は、刑の適用において、本節の規則に従って、判決において科される刑の(処遇?)等級および具体的範囲を考究する(razonar)。
 
2款 刑罰適用の特別規則

73
 2個以上の犯罪または軽犯罪(falta)の有責者に、それら複数の刑事違反に対応するすべての刑が、それらの性質および効果により(同時執行が)可能な場合、その同時執行のため科される。

74
1. 前条の規定にかかわらず、前もって立てた計画の実行で、または、類似の(identical)機会を利用して、1人以上の者を侵害する、また、同じまたは同様な性質の刑罰規定に違反する、複数の行為または不作為を実行する者は、継続犯として、最も重大な違反について規定される刑に処せられる。この刑は、1段階高い刑の上限が半分下回る刑まで至り得て、下限が半分上回って科される。
2. 財産に対する違反行為の場合、生じた損害の合計額を考慮して刑を科す。 これらの違反では、裁判官または裁判所は、行為が明白な重大性を帯びて、多数の人を害した場合には、1から2段階高い刑を適当と思料する範囲で理由付けして科す。
3. 前2項の規定からは、いちじるしく個人的な財物に対する侵害は、その同じ被害者に影響する名誉及び性的自由・安全に反する犯罪を構成するもの以外、除外される。これらの場合には、継続犯性を適用するか否かについて(犯罪)行為および違反された規定の性質に留意する。

75
 様々な違反行為に対応する刑の全部、または、なんらかが、有罪判決を受けた者により同時に履行され得ない場合は、可能な限り、その継続履行についてそれぞれの重大性の順位が順守される。

76
1. 前条の規定にかかわらず、有罪判決を受けた者の刑罰の実効的履行の最大値は、その者が陥った刑の内最も重い刑が科される期間の3倍を超えることはできない。この場合、既に科された刑罰が、当該最大値(これは20年を超えることはできない)をカバーすることから派生する(超過分)は消滅したと宣言される。例外的に、当該最大値は、次のようになる:
a) 当事者が2以上の犯罪で有罪判決を受け、そのうち1個が法律により20年までの禁固刑を科される場合、25年。
b) 当事者が2以上の犯罪で有罪判決を受け、そのうち1個が法律により20年超の禁固刑を科される場合、30年。
c) 当事者が2以上の犯罪で有罪判決を受け、そのうち少なくとも2個が法律により20年超の禁固刑を科される場合、40年。
d) 当事者がテロ組織またテロ・グループに係る犯罪、および、本刑法典第2編第12章第7節のテロ行為の犯罪で2以上の犯罪で有罪判決を受け、そのうち1個が法律により20年超の禁固刑を科される場合、40年。
e) 当事者が2以上の犯罪で有罪判決を受け、そのうち少なくとも1個が法律により見直し可能終身刑を科される場合、第92条および第78条の2の規定による。
2. 累反の目的として、最初に裁判された犯罪が裁判された期日前に犯された行為によって(刑が)科されたときは、(複数)刑が異なる裁判で科されたとしても、この制限が適用される(?)。

77
1. 前2条の規定は、1つの行為が2つ以上の犯罪を構成する場合、または、それらの一つが他を犯すため必要手段である場合は適用されない。
2. 前項の最初のケースでは、最も重大な犯罪に対して規定される刑がその下限が半分上回って、違反行為が別個に罰せられるときの対応する刑の合計を超過し得ないで、適用される。このように計算される刑がこの(合計)限界を超えるときは、各違反は別個に罰せられる。
3. 第2のケースでは、具体的場合で最も重大な違反に対応した刑を超える刑で、各犯罪に別個に科される具体的刑の合計を超過しない刑が科される。これらの限界の内で、裁判官または裁判所は、第66条の基準に従って、刑を個別化する。いずれにしても、科される刑は、前条に規定される期間の限界を超えることはできない。

78
1. 第76条第1項に定められた限界の結果、科される刑が、(個別に)科される刑の総計の半分未満となる場合、判決裁判官または裁判所は、懲罰利益(beneficio penitenciario)、出所許可、第3級への(処遇)分類および条件付保釈のための期間計算を(各)判決中に科される刑の合計に関係するように決定できる。
2. これらの場合、矯正観察裁判官は、社会復帰の個別的また有利な予想の後で、場合によって、受刑者の個人的事情および再教育処置の進展を評価して、検察庁、刑務所およびその他の関係者の意見を聞いて、(刑)履行の一般制度の適用を決定できる。
 テロ組織またテロ・グループに係る犯罪、および、本刑法典第2編第22章第7節のテロ行為の犯罪、または、犯罪組織の内部で実行された犯罪の場合は、科される刑の合計に留意して、前段の可能性は次の場合のみ適用できる:
a) 刑の履行上限の5分の1の履行が残るとき、第3級への分類(可能性)
b) 刑の履行上限の8分の1の履行が残るとき、条件付保釈(可能性)
3. 削除(2015330日基本法)

78条の2
1. 受刑者が2個以上の犯罪で処罰されていて、少なくとも、その1個が法律により見直し可能終身刑である場合は、第3級への移行には次の履行が必要である:
a) 受刑者が複数の犯罪で処罰されていて、その内1個が見直し可能終身刑で、残りの刑の合計が5年を超える場合、禁固が最低18年間履行されていること。
b) 受刑者が複数の犯罪で処罰されていて、その内1個が見直し可能終身刑で、残りの刑の合計が15年を超える場合、禁固が最低20年間履行されていること。
c) 受刑者が複数の犯罪で処罰されていて、その内2個以上が見直し可能終身刑である場合、または、1個が再審可能終身刑で、残りの刑罰の合計が25年以上の場合、禁固が最低22年間履行されていること。
2. これらの場合、刑の残りの執行停止には、受刑者が次の刑期を満了している必要がある:
a) 前項のa)とb)に係わる場合では、最低禁固25年間。
b) 前項のc)に係わる場合では、最低禁固30年間。
3. テロ組織またテロ・グループに係る犯罪、および、本刑法典第2編第12章第7節のテロ行為の犯罪、または、犯罪組織の内部で実行された犯罪の場合は、第3級への分類に達するための()履行の最低限度は、本条第1項のa)とb)に係わる場合では、禁固25年間、c)に係わる場合では、禁固30年間である。
 これらの場合、刑の残りの執行停止には、受刑者が、第1項のa)とb)に係わる場合では、最低、禁固28年間、c)に係わる場合では、最低、禁固35年間履行している必要がある。

79
 裁判官または裁判所が他の付加刑を伴う刑罰を科すときは、被告人にこれら付加刑を明示的に科す。

 

通訳案内士(元司法書士) 古閑次郎

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スペイン刑法典(2015年版)