6章 付加刑(consecuencias accesorias)

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1. 故意犯罪で科せられる刑罰全てには、それに起因する財産(efectos)、および、(犯罪の)準備または実行に用いられた財物(bienes)、手段または道具、更に、どういう形に変化していようと、犯罪に由来する収益(ganancias)の喪失を伴う。
2. 或る過失犯罪について1年超の自由剥奪刑を科すことを法律が規定している場合では、裁判官または裁判所は、それに起因する財産、および、(犯罪の)準備または実行に用いられた財物、手段または道具、更に、どういう形に変化していようと、犯罪に由来する収益の喪失を決定できる。
3. 事情によって本条前各項に規定される財物の没収が不可能な場合は、当該財物の価値に対応する量で他の財物の没収が決定される。特定の財物、財産または収益の没収が決定されるとき、同様な手続きが取られるが、その価値はその取得時の価値未満となる。

127条の2
1. 裁判官または裁判所は、根拠のある客観的嫌疑により財物または財産が犯行に由来すると決定するとき、また、合法的出所が証明されないとき、以下の犯罪のいずれかで有罪判決を受けた者に帰属する財物、財産および収益の没収を命じる:
a) 人身売買の罪。
b) 売春、年少者の性的搾取・堕落に係わる罪、および、16才未満の未成年者に対する性的濫用・侵害の罪
c) 第197条第2,3項と第264条の情報処理関連の罪。
d) 継続犯と再犯の場合で財産および社会的秩序に反する罪。
e) 課罰的破産に係わる罪。
f) 知的財産権 または工業所有権に反する罪。
g) 取引における腐敗の罪。
h) 第298条第2項の犯人蔵匿の罪。
i) 資金洗浄の罪。
j) 財政と社会保障に反する罪。
k) 第311条から313条の労働者の権利に反する罪。
l) 外国市民の権利に反する罪。
m) 第368条から373条の公衆衛生に反する罪。
n) 通貨偽造の罪。
o) 贈賄(cohecho)の罪。
p) 横領の罪。
q) テロリズムの罪。
r) 犯罪組織またはグループ内部で実行された罪。
2. 本条第1項の効果のため、他の(嫌疑の)中で、次の嫌疑が特に評価される:
① 問題の財物・財産の価値と有罪判決を受けた者の合法的出所から得る収入との不釣り合い。
② 介在する自然人、法人または法人格のない団体、あるいは、財物または財産の所有権特定を隠ぺいまたは困難にするタックス・ヘーブンを利用しての財産に係わる所有権またはいかなる処分権の隠ぺい。
③ 財物または財産の存在場所または目的地の特定を困難にする、または、妨害する、そして、法的または有効な経済的正当性が欠如する取引による財産の移転。
3. これらの場合、前条第3項の規定が適用される。
4. 後で前に犯したと同様な犯罪で有罪判決を受ける場合は、裁判官または裁判所は、前に決定された没収の範囲を新たな訴訟での没収に関して評価する。
5. 財物または財産が由来する犯罪活動が時効にかかっているとき、あるいは、無罪判決または既判力の効果での却下決定で解決した刑事裁判の目的であったときは、本条に係わる没収は決定されない。

127条の3
1. 裁判官または裁判所は、たとえ、有罪判決を介しなくとも、非合法的資産状況であることが対審において明らかにされ、次の場合のひとつが該当するときは、前各条に規定される没収を決定できる:
a) 本人が死亡した、または、判断を阻害する慢性病に罹患していて、(犯行が)時効にかかる危険がある場合。
b) 本人が不出廷の場合で、犯行を合理的期間内に裁判することを阻害する場合。
c) 刑事責任が免除された、または、消滅してしまったことにより、本人に刑を科さない場合。
2. 本条に係わる没収は、正式に起訴された者に対して、または、前項に係わる事情が刑事裁判の継続を阻害したときに犯罪の合理的嫌疑が存在する者に対してのみ、行うことができる。

127条の4
1. 裁判官または裁判所は、次の場合、第三者に移転された前各条に係わる財物、財産および収益、あるいは、それらと同じ価額の没収を決定できる:
a) 財産と収益の場合、犯罪活動に由来すると知って取得したとき、または、注意深い者は、その場合の状況で、その非合法出所を疑う動機をもっていただろうとき。
b) その他の財物の場合、こんなふうにしたらその没収を困難にすると知って取得したとき、または、注意深い者は、その場合の状況で、こんなふうにしたらその没収を困難にすると疑う動機をもっていただろうとき。
2. 反対の証明がない場合、財物または財産が無償で、または、市場価格より低廉で(第三者に)移転されたときは、当該第三者は、犯罪活動に由来する財物であったと、または、その没収を回避するために移転されたと知っていた、または、疑う動機を有していたと推定される。

127条の5
1. 裁判官または裁判所は、次の要件が重畳的に満たされるとき、有罪判決を受けた者の事前犯罪活動(actividad delictiva previa)に起因する財物、財産および収益の没収を決定できる:
a) 当人が第127条の21項に係わるなんらかの罪で罰せられる、または、罰せられた者であること。
b) 犯罪が継続的事前犯罪活動の文脈の中で行われたこと。
c) 有罪判決を受けた者の資産の重要な部分が事前犯罪活動に由来するとの合理的嫌疑が存在すること。
 重要な嫌疑とは次のものである:
① 問題の財物・財産の価値と有罪判決を受けた者の合法的出所から得る収入との不釣り合い。
② 介在する自然人、法人または法人格のない団体、あるいは、財物または財産の所有権特定を隠ぺいまたは困難にするタックス・ヘーブンを利用しての財産に係わる所有権またはいかなる処分権の隠ぺい。
③ 財物または財産の存在場所または目的地の特定を困難にする、または、妨害する、そして、法的または有効な経済的正当性が欠如する取引による財産の移転。
 前段の規定は、当人が、その犯罪活動により6,000ユーロ超の収益を受けたとの合理的嫌疑が証明されるときのみ適用される。
2. 前項の効果のために、次の場合、犯罪は継続的事前犯罪活動の文脈の中で行われたとみなされる:
a) 本人が、直接的または間接的経済利益の取得をもたらした3個以上の犯罪により、または、直接的または間接的経済利益の取得をもたらした少なくとも3個の犯罪行為を含む継続犯罪により、同じ訴訟手続きの中で罰せられる、または、罰せられたこと。
b) または、第127条の2に係わるなんらかの犯罪により有罪判決を受けたところの訴訟手続きが開始した時以前6年の期間内に、直接的または間接的経済利益の取得をもたらした2個以上の犯罪により、または、少なくとも2個の犯罪行為を含む継続犯罪により罰せられたこと。

127条の6
前条の規定の効果のために、次の推定が適用される:
① 有罪判決を受けた者が刑事裁判開始日の6年前に始まる期間の中で取得した全財物はその者の犯罪活動に由来すると推定される。
 この効果のために、財物は、本人が持っていたと証明する日以前に取得されたものとみなす。
② ①の前段に係わる期間内に有罪判決を受けた者が支払った全費用は、犯罪活動に由来する資金で支払われたと推定される。
③ ①に係わる全財物は租税(cargas)なしで取得されたものと推定される。
 裁判官または裁判所は、事案の具体的状況内で、(推定が)不正確または不均衡であると明らかなときは、これらの推定を特定の財物、財産または収益に適用しないと決定できる。

127条の7
 没収の執行が、財物、財産または収益の性質または状況により、あるいは、他の事情により、全部または一部で、実行できない場合は、裁判官または裁判所は、決定(auto)により、合法的出所の物を含め、(犯罪)行為の刑事責任者に属する他の財物の没収を、当初決定された没収の未執行部分に等価で、決定できる。
 特定の財物、財産または収益の没収が決定され、その価値がその者の取得時の価値より低い場合も、同様な手続きが取られる。

127条の8
1. 没収の効果を保証するため、最初の(訴訟)手続きの時より、司法当局は財物、手段、道具および収益を押収または差し押さえおよび保管することができる。
2. 介入された財物・財産の期限前の換金(realización anticipada)または暫定的利用の決定は、刑事訴訟法の規定に従って裁判官または裁判所に対応する。
3. 確定決定で没収された財物、財産および収益は、被害者への補償の支払いに向けられるべきでない場合は、国が取得し、法または規則が定める方法でその行き先を決める。

128
 前述の財産および道具が合法取引に由来し、また、犯罪行為の性質または重要性と均衡を失するとき、または、民事責任が完全に満足されたときは、裁判官または裁判所は没収を宣言しない、または、部分的に宣言することができる。

129
1. 企業、組織、グループあるいは第31条の2に含まれない法人格を欠く団体または人の集まりの協力で、それらを介して、または、通じて、内部で(en el seno)行われた犯罪の場合、裁判官または裁判所は、当該企業、組織、グループ、団体または人の集まりに、理由付きで犯罪の主犯に対応する刑罰に1個または数個の付加刑を、第33条第7項のc)からg)に規定される内容で、科すことができる。
2. 前項に係わる付加刑は、本刑法典が明示的にそう規定するとき、または、(犯罪が)本刑法典が法人への刑事責任追及を許すところの犯罪であるとき、企業、組織、グループあるいは前項で言及される団体または人の集まりに対してのみ適用できる。
3. 店舗(local)または施設の一時的閉鎖、社会的活動の停止および司法監査(intervención judicial)を、予審判事も、本条の規定の効果のため、第33条第7項に規定される限界で、訴訟の審理の間、保全処分として決定することができる。

129条の2
 生命、身体、自由、性的自由または安全に反する重大な犯罪の実行で、あるいは、テロリズムまたは生命、健康または身体への重大な危険を伴うその他の重大な犯罪の実行で有罪判決を受けた者の場合、行為の状況、前歴、その者の人間性から、または、その他の入手可能情報から、再犯の顕著な危険があると評価できるときは、裁判官または裁判所は、その生物学的標本の採取、DNA識別子の取得のための分析実施、および、警察データ・ベースへの登録を決定できる。もっぱら、個人識別とその性別の表示遺伝情報を排他的に提供するDNA識別子を取得するために必要な分析だけが実施できる。
 本人が標本採取に反対する場合、その執行に必要最小限の強制処分に訴えてその強制執行を科すことができる。強制処分は全ての場合事案の事情に均衡していて、本人の尊厳を尊重したものでなければならない。

 

通訳案内士(元司法書士) 古閑次郎

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スペイン刑法典(2015年版)