(第24章 国際共同体に対する犯罪)
3節 武力紛争の際に保護される人および財産に対する犯罪

608
 この節の効果のために、次の者は保護される人とみなされる:
1949812日ジュネーブ条約ⅠおよびⅡ、または197768日追加議定書Iによって保護される負傷者、病人または難破者、および、衛生職員または宗教人。
1949812日ジュネーブ条約Ⅲ、または、197768日追加議定書Iによって保護される戦争捕虜。
1949812日ジュネーブ条約Ⅳ、または、197768日追加議定書Iにより保護される民間住民(población civil)および民間人。
1949812日ジュネーブ(諸)条約、または、197768日追加議定書Iにより保護される戦闘外の人々、保護勢力(Potencia Protectora)の職員およびその代理職員。
1899729日ハーグ条約Ⅱによって保護される休戦交渉使節(parlamentarios)およびそれに付随する人。
1994129日国連職員および関連職員(personal asociado)の安全に関する協約(Convención)により保護される国連職員および関連職員。
⑦ 197768日追加議定書またはスペインが締約国であるその他のいかなる国際条約の下でその地位(condición)を有するその他のいかなる者。

609
 武力紛争時に、保護されているいかなる人を、実際に虐待する、その生命、健康または身体を危険にさらす、人体実験を含んでその人を拷問または非人間的扱いの対象にする、その人に著しい苦痛を引き起こす、または、その人を、その健康状態が必要としない、また、行為の責任者が同様な医療状況で自由剥奪されていない自国民に適用する一般的に認められる医療規則に従っていない、医療行為に服さしめる者は、4年から8年の禁固刑に処せられる。ただし、生じた傷害の結果(resultado lesivo)に対応する刑を害しない。

610
 武力紛争の際に、禁止された、または、不必要な苦痛または余分な害悪を引き起こす目的の戦闘方法または手段を、同じく、住民の健康または生存を危険にさらして、自然環境に広範、長期および深刻な損害を引き起こすことが考えられる、または、そのことが基本的に予見できる戦闘方法または手段を採る、または、採るように命令する、または、情け容赦しない(no dar cuartel)と命令する者は、10年から15年の禁固刑に処せられる。ただし、生じた結果に対応する刑を害しない。

611
 武力紛争の際に、次のことをする者は、生じた結果に対応する刑を害することなく、10年から15年の禁固に処せられる。
① 無差別または過度の攻撃を実行する、または、実行を命じる、あるいは、民間住民を、攻撃、報復またはその主たる目的が住民を恐怖させる暴力行為または威嚇の対象とする。
② 武力紛争において適用される国際法規則に違反して、敵対側または中立側の非軍事艦船または航空機を、必要もなく、および、人の安全および積んである文書(documentación)の保存に備えるために必要な時間を与えず、または、必要な措置を取らず、破壊または損傷する。
③ 戦争捕虜または民間人に、いかなる形式でも、敵対側の軍隊に奉仕することを強制する、または、それらの者から正規かつ公平な裁判を受ける権利を剥奪する。
④ 保護される人を、強制的に国外追放または移送する、人質に取る、または、不法に拘禁または監禁する、あるいは、敵対側の攻撃を避けてある地点、ゾーンまたは軍を配置するために利用する。
⑤ 占領地に占領側の住民を、そこに永続的に住むために、直接または間接に、移送および定着させる。
⑥ 保護される人に関して、人種分離の実践を、および、人の尊厳に反する侮辱を含意する、好ましくない他の差別(distinción)に基づく非人間的かつ卑しい実践を実行する、実行を命じる、または、維持する。
⑦ 戦争捕虜または民間人の解放または帰国を不当に阻止する、または、遅らせる。
⑧ 敵対側国民の権利および訴え(acciones)は、廃止された、中断された、または受け入れられないと、裁判官または裁判所の前で、陳述する(declarar)
⑨ 保護される人の性的自由を、強姦、性的隷属、教唆または強制された売春、強制懐胎、強制去勢の行為または他のいかなる形式の性的加害を犯して、侵害する。

612
 武力紛争の際に、次のことをする者は、生じた結果に対応する刑を害することなく、3年から7年の禁固刑に処せられる。
① 適切な識別表示または信号で知らされている、病院、施設、資材、衛生輸送ユニットおよび手段、捕虜収容所、衛生および安全地帯および地域、中立地帯、民間住民の収容場所、無防備地域および非軍事地帯への然るべき保護(protección debida)を、故意に侵害する。
② 衛生要員、宗教人、医療ミッションまたは救援団体の構成員の上に、または、国際法に従って、ジュネーブ条約の識別表示または信号を使用する資格がある人員に対して、暴力を行使する。
③ 保護される人を著しく侮辱する、不可欠な食糧または必要な医療支援を奪うまたは供給しない、その人を卑屈または卑しい扱いの対象とする、正当な遅延なしにかつ理解できるようにその人にその状況を通知しない、個人の行為で集団罰を科す、スペインが加盟している国際条約で設定されている、女性および家族の住居に関する、または、女性および子供の特別保護に関する規定を侵害する、および、特に18歳未満の未成年者を徴兵または兵籍に登録する、または、それらを戦闘行為に直接参加させる。
④ スペインが加盟している国際条約で設定・承認されている保護または識別表示、記章または信号を不当に使用する。特に、赤十字、赤半月(Media Luna Roja)および赤水晶(Cristal Rojo)の識別表示。
⑤ 中立国、国連、紛争当事国でない他国または敵対側の旗、制服、記章または識別エンブレムを、スペインが加盟している国際条約で明示的に規定される例外的場合を除いて、戦闘中に、または、軍事作戦を援護、援助、保護または妨害するために、不当に、または、背信的に使用する。
⑥ 休戦交渉使節または降伏の旗を、不当に、または、背信的に使用する、不可侵性を侵害する、または、休戦交渉使節、その随行員、保護勢力の要員またはその代理、または、国際調査委員会(Comisión Internacioanl de Encuesta)のメンバーを不当に拘束する。
⑦ 死体、負傷者、病人、難破者、戦争捕虜または収容された民間人からその持ち物(efectos)を奪う。
⑧ ジュネーブ条約およびその追加議定書に従って実施される、救援の供給を恣意的に妨害する行為を含め、生存に不可欠な財物を奪って、戦争の方策として民間住民を意図的に飢餓で苦しませる。
⑨ 停戦、休戦、(条件付)降伏または敵対側と締結した協定を破る、
⑩ 国連要員のメンバー、関連要員または国連憲章に従って平和または人道的支援のミッションへの参加者に対して、それらの者が武力紛争の国際法に従って民間人または民間物資に与えられる保護を受ける権利を有している場合、意図的に攻撃を仕向ける、または、ある自然人または法人にある行為を実行する、または、実行を放棄することを強制するために、それらの者を攻撃すると強迫する。

613
1. 武力紛争の際に、次の行為のなんらかを実行する、または、実行を命じる者は、4年から6年の禁固刑に処せられる。
a) 人々の文化的または精神的な遺産を構成する文化財または信仰の場所に対して、それらの財物または場所が軍事目標の直近に位置していない場合、または、敵対軍事勢力の支援に利用されなくて、かつ、正当に表示されている場合に、攻撃する、または、それらを報復の対象とし、または、戦闘行為を行なう。
b) a)号に係わる文化財または信仰の場所を軍事行動支援に、不当に利用する。
c) a)号に係わる文化財または信仰の場所を、大規模に自己のものとする、盗む、略奪する、または、それらに野蛮行為を実行する。
d) 敵対側の民間財物を、その破壊を引き起こして、攻撃する、または、報復または戦闘行為の対象とする。このような行為が、ケースの状況において、特定の軍事的利益を与えない、または、それら財物が敵対側の軍事行動に効果的に貢献していない場合。
e) 民間住民の生存に不可欠な財物を攻撃、破壊、窃取または無効化する。ただし、敵対側が軍事行動支援に直接それら財物を使用する、または、その軍のメンバーの存続手段として排他的に使用する場合を除く。
f) 危険破壊力(fuerzas peligrosas)を格納する建造物(obras)または施設を、攻撃するとその破壊力を解き放し、その結果、民間住民に重大な損害を引き起こす可能性があるときに、攻撃または報復対象とする。ただし、そのような建造物または施設が軍事行動の正規、重要、直接支援に使用されていて、そのような攻撃がその支援を終わらせる唯一の有効手段である場合を除く。
g) 軍事的必要性なしに、自己に帰属していない物を破壊、損傷または自己のものとする、他人をそれらを引き渡すように強要する、または、他のいかなる略奪行為を行なう。
h) 被占領地域で動産または不動産を、不当にまたは不必要に、徴発する、または、海洋における武力紛争に適用される国際規則に違反して、敵対側または中立側の非軍事艦船または航空機、および積荷を破壊する、または、それらを捕獲する。
i) 第612条⑩号に係わる要員のいかなるメンバーの施設、機材、(機械)ユニット、個人的住宅または自動車に対して攻撃する、または、戦闘行為を行なう、または、ある自然人または法人にある行為を実行する、または、実行を放棄することを強制するために、そのような攻撃または戦闘行為でもって強迫する。
2. 攻撃、報復、戦闘行為または不当利用が、特別な保護下にあるまたは特別な合意により保護が与えられている文化財または信仰場所、あるいは、強化された保護下にある文化的不動産または信仰場所、または、それらの直近周辺を対象とするときは、1段階高い刑を科すことができる。
 本条前項に規定されるその他のケースでは、攻撃等が加えられる財物、建造物または施設に広範かつ重大な破壊が引き起こされるとき、または、極端に深刻である場合、1段階高い刑を科すことができる。

614
 他のいかなる違反行為を、または、スペインが加盟している戦闘行為の指揮(conducción)、戦闘手段および方法の規制(に反する)、負傷者、病人および難破者の保護、戦争捕虜の適切な扱い、民間人の保護および武力紛争の場合の文化財保護に関する国際条約の規定に反する行為を、武力紛争の際に実行する、または、実行することを命じる者は、6月から2年の禁固刑に処せられる。

614条の2
 本節に含まれる行為のいかなるものが、ある計画または政策の一部を占める、または、大規模に犯されるときは、それぞれの刑はその下限を半分上回らせて科される。

 

通訳案内士(元司法書士) 古閑次郎

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スペイン刑法典(2015年版)